NISAの「売った枠が同じ年に戻る」は、まだ決まっていません|金融庁が出したのは要望で、去年はそこだけ落ちました

増やす・NISA

※ 本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

2026年8月31日、金融庁が「令和9年度 税制改正要望項目」を公表しました。そのなかに、NISAで売った分の枠(生涯で使える非課税保有限度額1,800万円のほう)を、同じ年のうちに戻せるようにしてほしいという項目が入っています。

この話は、少し前からネットでも見かけます。ただ、ひとつだけ先にお伝えしておきたいことがあります。これは「要望」であって、決まったことではありません。しかも去年も、同じ中身の要望が出ていて、そこだけが、閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」に載りませんでした。

この記事では、金融庁が出した資料の言葉をそのまま並べながら、①いま何が起きているのか ②いまのルールはどうなっているのか ③去年の要望はどこまで通ってどこが落ちたのか を順番に見ていきます。そして最後に、金融庁自身が資料の注記に書いている、これが何年後の話なのかという一文を紹介します。読み終わるころには、「今日やることは何もない」と落ち着いて言えるはずです。

💭 こんな悩み・不安はありませんか?
  • 「NISAの枠がその年のうちに復活する」という話を見かけて、本当なのか分からない
  • 制度改正のニュースが毎年出るたびに、何か手続きがいるのか不安になる
  • 「要望」「大綱」「法律」という言葉の違いがよく分からず、どこで確定なのか見分けられない
  • いま積み立てている設定を、変えたほうがいいのか迷ってしまう

→ ひとつでも当てはまったら、この記事が「ニュースの段階を見分ける」お手伝いをします。

  • 8月末に出たのが「要望」であって決定ではないということ(資料の言葉そのまま)
  • いまのルール=売った分の生涯枠(1,800万円)が使えるのは翌年から。年360万円の年間投資枠は売っても増えません
  • 去年のNISA関連の要望4本のうち、どれが通って、どれが落ちたかの答え合わせ
  • 金融庁自身が注記に書いた「年間投資可能額が360万円以下となり得るのは 令和11年以降」という一文
  • これから制度ニュースを見たときに、要望・大綱・法律を見分ける言葉のサイン
ふくお × ねこた
ねこた
ねこた

ふくおさん、ビッグニュースっす!NISAの枠、売ったらその年のうちに戻ってくるようになるらしいっすよ。じゃあ自分、いったん全部売って、買い直しても損しないってことっすよね?

ふくお

落ち着こうか。その話、まだ決まってないんだ。8月31日に金融庁が出したのは「要望」で、要望っていうのは「こうしてほしい」というお願いの段階だよ。資料のタイトルも「令和9年度 税制改正要望項目」ってなってる。

ふくお
ねこた
ねこた

えっ、お願いなんすか。でも金融庁が言ってるなら、もう決まったも同然じゃないっすか?

ふくお

それがね、去年も同じ中身の要望が出てるんだよ。金融庁の今年の資料にも、この項目には【継続要望】って書いてある。しかも去年は、同じ項目に並んでいた要望3本のうち2本は通って、この「同じ年に戻す」だけが、閣議決定された大綱に載らなかった。僕はそれを、この記事を書くために121ページの大綱を開いて確かめてきたところなんだ。

ふくお
ねこた
ねこた

じゃあ自分、決まってない話で売り買いするところだったんすか…。あぶなかったっす。どこを見たら「決まった」って分かるんすか?

ふくお

そこが今日いちばん持ち帰ってほしいところだよ。段階は3つあって、見分ける言葉も決まってる。今日はそれを、実際の資料の文章を見ながら順番に確かめていこう。結論から言うと、いまのルールは何も変わっていないし、今日やることもないんだ。

ふくお
✏️ ふくおの体験談

コーヒーを置いて資料を読み返しているふくお

2026年6月に、2026〜2027年、NISAはこう変わるという記事を書きました。そのなかに、僕はこう書いています。「これは金融庁が要望として出していたものの、2026年度の改正では見送られました。」

その「見送られました」と書いた一文が、8月末にそのまま戻ってきました。同じ言い回しの要望が、また出ていたのです。自分が3か月前に書いた文章を、自分で追いかけることになりました。

今回は「また要望が出ました」で終わらせたくなかったので、去年の要望が実際どうなったのかを、1本ずつ大綱で確かめました。121ページのPDFを開いて、NISAの章を最初から最後まで読んで、それから「復活」という語をページ全体で数えました。結果は0回でした。「非課税保有限度額」も「当年」も0回です。見送られた、というのは、こういうことでした。

この作業をやって、僕の中で制度ニュースの読み方がひとつ変わりました。要望が出たかどうかではなく、去年の同じ要望がどうなったかを見る。それだけで、ニュースの温度がだいぶ下がります。

まず、8月末に出たのは「要望」です。決まったことではありません

2026年8月31日、金融庁が報道発表しました。ページのタイトルは「金融庁の令和9年度税制改正要望について」、本文には「今般、金融庁では『令和9年度 税制改正要望項目』を取りまとめました。」と書かれています。「要望」という言葉が、タイトルにも本文にも入っています。

その資料のなかで、NISAについての要望事項はこう書かれています。逐語で引きます。

あらゆる世代が自身のライフプランに沿った形で資産形成を行えるよう 、非課税保有限度額の当年中の復活や 、つみたて投資枠における要件の整備等、NISAの利便性向上等にかかる所要の措置を講ずること。

出典:金融庁「令和9(2027)年度 税制改正要望について」(2026年8月)3ページ目「要望事項」

文末に注目してください。「講ずること」です。「講じます」でも「講じました」でもありません。これは金融庁が、税制を決める側に対してお願いをしている文章だからです。

そして同じページの図には、金融庁自身の言葉で「現状」と「検討案」という2つの見出しが並んでいます。金融庁も、これをまだ「検討案」と呼んでいます。

同じ要望に、もうひとつ入っているもの

いま引用した要望事項を、もう一度よく読んでみてください。「非課税保有限度額の当年中の復活や、つみたて投資枠における要件の整備等」と書かれています。枠が戻るタイミングの話は、この要望の一部です。

もうひとつの「つみたて投資枠における要件の整備」は、つみたて投資枠で買える商品の条件を決めましょう、という話です。資料の図は、縦に「公募投信」と「ETF」、横に「指定指数連動」と「指定指数連動 以外」を並べた表になっています。そのうち「現状、要件未整備」と書かれているのは、ETFの「指定指数連動 以外」の欄だけです。そして矢印の先に、こうあります。

ETF市場の環境整備等が進展したことを踏まえ、対象とすべきETFの要件を整備する

出典:金融庁「令和9(2027)年度 税制改正要望について」(2026年8月)3ページ目 図中

つまり「つみたて投資枠に入れられるETFの条件を、これから決めたい」という要望です。いまインデックスファンドを積み立てている人にとって、手持ちの投資信託が何か変わるという話ではありません。そして、これも要望の段階です。

※この図は2行×2列の表になっていて、どの条件がどの欄にかかるかを読み違えやすい形をしています。ここでは図に書かれているラベルと矢印の文章だけを引用しました。くわしい条件は金融庁の資料そのものをご確認ください。

制度が「決まった」になるまでの3つの段階

税制の話は、だいたい毎年おなじ順番で進みます。

「決まった」になるまでの3つの段階今回のNISAの話は、いちばん手前の①で出ただけの段階です1要望毎年8月末ごろ各省庁が「こうしてほしい」を出すまだ何も変わらない2大綱毎年12月ごろ要望のうち何を採るかが決まるここで落ちる項目もある3法律翌年の春ごろ国会で成立してはじめてルールにここから効き始めるいまここ※①の段階では、いまのルールは1つも変わっていません

2026年8月31日に起きたのは、この図の①です。②の大綱が出るのは例年12月ごろ、③の法律が成立するのは翌年の春ごろです。つまり、いま私たちが持っているNISA口座のルールは、8月31日の前と後でまったく同じです。

⚠️ 大事な前提
この記事は、2026年9月時点で公開されている資料をもとに書いています。今後の税制改正の内容や成立の見通しについて、当ブログが予測・断定することはできません。最終的にどうなるかは、12月の大綱と、その後の国会の審議で決まります。

いまのルールは、生涯枠が戻るのは「翌年から」です(金融庁の説明そのまま)

要望の話に入る前に、いま動いているルールを確かめておきます。金融庁のNISA特設ウェブサイトには、こう書かれています。

2024年からのNISAでは、商品を売却した場合、翌年以降売却した商品の簿価 (取得金額) の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能になります。

・年間投資枠と非課税保有限度額(総枠)は、簿価をもとに計算されます。
・上記の例では、売却した場合、翌年復活する金額は簿価の100万円です。
・NISA口座で保有している商品を売却した場合に損益がなくなるということではありません。

出典:金融庁 NISA特設ウェブサイト「NISAを知る」(2026年9月2日閲覧)

※ここで「復活」するのは、下の表の非課税保有限度額(総枠)のほうです。年360万円の年間投資枠は、売っても増えません。

ここで押さえておきたいのは、戻ってくるのは簿価(買ったときの金額)だということです。100万円で買ったものが150万円になっていて、それを売った場合でも、翌年戻るのは100万円ぶんです。増えた50万円はNISAの枠を1円も使っていないので、戻る枠にも入りません。この考え方は NISAが増えてきた。売ったほうがいい? でくわしく書いています。

そしてもうひとつ。NISAには2種類の枠があります。

枠の名前 いくらか どう数えるか
年間投資枠 つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=年360万円 1年ごとにリセットされる
非課税保有限度額(総枠) 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) 一生涯で使える合計。売れば簿価の分だけ戻る

※2023年までのNISAで保有している分は、この1,800万円の外枠で管理されます(金融庁の説明による)。

ここでひとつ補足しておくと、NISAは「非課税で投資できる箱(口座)」の名前です。箱そのものが値上がりしたり値下がりしたりするわけではありません。箱の中で買うのは投資信託や株式で、枠の話はその箱に、いくらまで入れられるかという話になります。

今回の要望は、このうち下の「非課税保有限度額(総枠)」が戻るタイミングの話です。上の年間投資枠の360万円を増やす話ではありません。ここは混ざりやすいので、次の図で並べて見ておきます。

「検討案」でも、1年に買える上限は360万円のままです

金融庁の資料の図は、左が「現状」、右が「検討案」という2列になっています。その中身を、言葉のとおりに描き直すとこうなります。

売った分の枠(非課税保有限度額)は、いつ戻るか左=いまのルール/右=要望で出された案(金融庁の資料では「検討案」)現状X年に売るその年は戻らないX+1年に戻るいま動いているのはこちらです「翌年以降…復活し、再利用が可能」(金融庁)検討案X年に売る同じ年のうちにX年(同年)に戻るまだ決まっていません「非課税保有限度額の当年中の復活」(要望事項)どちらの場合も、その年に買える上限は「年間投資枠の範囲 最大360万円」のままです※金融庁の資料の図に書かれている言葉をもとに作成しました。「検討案」は金融庁自身の呼び方です。

図のいちばん下の帯が、見落とされやすいところです。金融庁の資料の図には、現状の側にも検討案の側にも、同じように「年間投資枠の範囲 最大360万円」と書かれています。つまり、かりに総枠が同じ年に戻ったとしても、その年に買える金額の上限が360万円であることは変わりません。

なぜ現状では同じ年に戻らないのか。理由も図の中に書かれています。「年間投資枠は年初に確定」という一言です。年の途中で売っても、その年の買える枠は増えません。図に描かれているのは、その年の年間投資枠をすでに使い切った人の場面です。売ったあとも「年間投資可能額ゼロ」のまま、と表現されています。

📝 ここまでの整理

  • 要望されているのは「総枠1,800万円が戻るタイミング」だけ
  • 年間の上限360万円は、要望のなかでも変わっていない
  • そして、これはまだ要望である
ふくお × ねこた
ねこた
ねこた

あれ、じゃあ「その年のうちに戻る」ようになっても、結局その年に360万円までしか買えないんすか?なんか思ってたのと違うっす。

ふくお

そうなんだ。金融庁の図にも、両側に「年間投資枠の範囲 最大360万円」って書いてある。だからこの要望は、「たくさん買えるようにする話」じゃなくて「持っている商品を入れ替えやすくする話」なんだよ。去年の要望書には、目的まで書いてあってね。

ふくお
ねこた
ねこた

目的まで書いてあるんすか。なんて書いてあったんすか?

ふくお

去年の資料には、そのまま「投資商品の入替をしやすくするための、非課税保有限度額の当年中の復活」って書いてある。入替、つまり乗り換えのための話なんだ。毎月コツコツ積み立てている人が、これで得をするという話ではないんだよ。

ふくお

去年も、同じ中身の要望が出ていました

ここからが、この記事のいちばんの中身です。去年(令和8年度)の要望が、実際どうなったのかを確かめます。

その前にひとつ。今年の金融庁の資料では、このNISAの項目の右上に【継続要望】と書かれています。去年から続けて出している要望です、と金融庁自身が明記しているわけです。この記事の出発点は、この4文字です。

2025年8月に金融庁が出した「令和8(2026)年度税制改正要望について」の3ページには、「◆ NISA対象商品の拡充を含む制度の充実」という項目があり、要望項目概要として3本が並んでいます。逐語で引きます。

① こども支援の一環としての、つみたて投資枠における対象年齢等の見直し〔こども家庭庁が共同要望〕
② 様々な資産運用ニーズに応えるための、対象商品の拡充等
③ 投資商品の入替をしやすくするための、非課税保有限度額の当年中の復活

出典:金融庁「令和8(2026)年度税制改正要望について」(2025年8月)3ページ目

同じ資料には、これとは別に「◆ NISAに係る所在地確認の手続きの簡素化等」という項目もありました。合わせて4本です。

では、2025年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」(121ページ)で、この4本はどうなったか。「3 金融・証券税制」の章を読むと、こうなっていました。

去年の要望 大綱でどうなったか
① つみたて投資枠の対象年齢等の見直し ✅ 「非課税口座の口座開設可能年齢の下限を撤廃する。」と記載(いわゆるこどもNISA)
② 対象商品の拡充等 ✅ 「指定指数の範囲に、次に掲げる指数を加える。a 読売株価指数 b JPXプライム150指数」/「対象資産を株式又は公社債(現行:株式)とする。」と記載
③ 非課税保有限度額の当年中の復活 ❌ 記載なし
(別項目)所在地確認の手続きの簡素化等 ✅ 「金融商品取引業者等が行う基準経過日における非課税口座を開設している居住者等の住所等の確認に係る措置を廃止する。」と記載

※大綱の該当箇所は「3 金融・証券税制(国税・地方税)〔拡充等〕(1)」です。表現は当ブログで要約せず、原文から引用しています。

③だけが載りませんでした。「載らなかった」というのは印象の話ではありません。大綱121ページ全文から文字を取り出して、当ブログで機械的に数えた結果がこれです。

🔢 令和8年度税制改正の大綱(121ページ)での出現回数

  • 「復活」…… 0回
  • 「非課税保有限度額」…… 0回
  • 「当年」…… 0回

※当ブログが財務省公開のPDFからテキストを抽出して数えました(2026年9月時点)。数え方の都合で図表内の文字などが含まれない可能性があります。

この項目に3本並んでいて、2本は大綱の文章になり、1本は語ごと消えた。別項目の所在地確認も通ったので、4本のうち落ちたのは、この1本だけです。これが「要望が出た」と「決まった」のあいだにある距離です。

去年の要望のうち、通った2本はもう法律になっています

落ちた話ばかりでは公平ではないので、通ったほうも見ておきます。去年の①「つみたて投資枠における対象年齢等の見直し」は、大綱で「非課税口座の口座開設可能年齢の下限を撤廃する。」という一文になりました。18歳未満でもNISA口座が開けるようにする、という意味です。いわゆる「こどもNISA」と呼ばれているものです。

そして大事なのはここからです。この大綱をもとにした「所得税法等の一部を改正する法律」は、2026年3月31日に成立し、同じ日に公布されました(財務省「第221回国会における財務省関連法律」)。法律案要綱にも「非課税口座の口座開設可能年齢の下限を撤廃する」と「未成年者特定累積投資勘定」が入っています。去年の①は、要望 → 大綱 → 法律という3つの段階を、すべて通り抜けたことになります。実際に口座が開けるようになるのは令和9年(2027年)1月1日以後です。

法律の中身のうち、読者に関係しそうなところを挙げると、こうなります。

項目 記載されている内容
いつから 口座開設可能期間は令和9年1月1日以後(その年1月1日において18歳未満である年および出生した日の属する年に限る)
いくらまで 1年につき取得対価の額の合計額が60万円を超えないもの/生涯の累計で600万円を超えることとなるものは受け入れない
買えるもの つみたて投資枠に受け入れられる公募等株式投資信託の受益権
引き出し 原則として基準年(その年3月31日に18歳である年)の前年12月31日まで払い出せない。ただしその年3月31日に12歳である年以後は、学校等の入学金・授業料その他の教育費または生活費の支払い(特定事由)による払出しが可能

※「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日 閣議決定)および「所得税法等の一部を改正する法律案要綱」の記載を要約したものです。制度の詳細や実際の取り扱いは、成立した法令および各金融機関の案内でご確認ください。

去年の8月には、これも「要望」の1行でした。それが12月に大綱の文章になり、3月に法律になりました。要望は、落ちることもあれば、法律まで通ることもある。だからこそ、8月の段階で結論を決めてしまわないほうがいいのだと思います。こどもNISAそのものについては こどもNISAの記事 にまとめています。

⚠️ 去年落ちたから今年も落ちる、という意味ではありません
去年の結果は、今年の結果を予測する材料にはなりません。当ブログは今回の要望が通るか通らないかを予想しません。ここでお伝えしたいのは、「要望の段階では、まだ結果が分からない」という一点だけです。

金融庁自身が「360万円以下となり得るのは令和11年以降」と注記しています

今年の資料には、去年になかった一文があります。図の下の注記です。ここも逐語で引きます。

(注) 新NISA(令和6年に制度開始)の年間投資可能額が360万円以下となり得るのは 令和11年以降だが、投資家の制度の予見可能性を高め、金融機関のシステム対応のため十分な期間を確保するためには今年度の改正が必要。

出典:金融庁「令和9(2027)年度 税制改正要望について」(2026年8月)3ページ目 注記

金融庁が書いているのは「年間投資可能額が360万円以下となり得るのは 令和11年以降」までで、「効いてくる」というのは当ブログの読み替えです。ただ、意味するところは同じです。この検討案が実際に効いてくるのは令和11年(2029年)以降だ、と要望を出した当人が書いているわけです。理由は、算数で確かめられます。

⚠️ この注記は「だから急がなくていい」という意味ではありません
金融庁は同じ一文の後半で、「投資家の制度の予見可能性を高め、金融機関のシステム対応のため十分な期間を確保するためには今年度の改正が必要」と、いま改正すべき理由のほうを書いています。制度側の準備には時間がいるという話と、読者にとって今日やることがないという話は、別のものです。当ブログが引いているのは後者だけです。

NISAの総枠は1,800万円で、1年に使えるのは最大360万円。1,800万円 ÷ 360万円 = 5年です。制度が始まった令和6年(2024年)から毎年上限いっぱいに使い続けたとして、総枠を使い切るのに最短で5年かかります。

年360万円ずつ使った場合、総枠の残りはこうなります満額で使い続けたいちばん早いケースです。多くの人はもっと先になります1,8001,3509004500(万円)年360万円1,8001,4401,0807203600令和6年2024令和7年2025令和8年2026令和9年2027令和10年2028令和11年2029ここで初めて360万円を下回る※各年の年初に残っている非課税保有限度額。毎年上限いっぱい使った場合の当ブログの試算で、公表値ではありません。

グラフの棒は、それぞれの年の年初に残っている総枠です。令和10年(2028年)の年初でちょうど360万円、そして令和11年(2029年)の年初にゼロになります。ここで初めて、「その年に買える金額」が年間投資枠の360万円ではなく、残っている総枠のほうで決まる状態になります。金融庁の注記にある「令和11年以降」は、この意味です。

もちろん、毎年360万円を使い切っている人は多くありません。使うペースがそれより遅ければ、総枠がなくなる年はもっと先になります。つまり、この要望が仮に通ったとしても、積立投資を続けている多くの人にとっては、すぐに何かが変わる話ではないということです。

⚠️ 上のグラフの前提
これは「年360万円を毎年使い切った場合」という、いちばん早いケースの計算です。実際の残り枠は、いくら買っていくら売ったかで人によって違います。ご自身の残り枠は、利用している金融機関の口座画面で確認してください。

✏️ ふくおの体験談

分かれ道の道しるべの前で立ち止まっているふくお

2018年に130万円を失ったころの僕は、こういう情報にいちばん弱い人間でした。「制度が変わるらしい」「いまのうちに動いたほうがいい」という言葉を見ると、内容を確かめる前に、まず口座を開いていました。動かないと損をする気がしていたのです。

いまは月10万円を積み立てています。その間、税制改正は毎年ありました。今回調べていて知ったのですが、金融庁の資料には、NISAについての要望が平成21年度から令和8年度まで18年度分、切れ目なく並んでいます。令和9年度の要望で19回目です。つまり僕が投資を始めるずっと前から、毎年なにかが要望されていたことになります。

それでも僕は、この数年で積立の設定を一度も触っていません。もちろん、収入が変わったり家計の事情が動いたときは見直します。ここで言っているのは、制度のニュースを理由に触ったことは一度もない、という意味です。18年連続で要望が出ているという事実は、裏を返せば「毎年ニュースは出るけれど、自分のやることは毎年変わらない」ということでもあります。

制度のニュースは、読んで「自分に関係があるか」を1回だけ確かめる。関係がなければ、そのまま閉じる。130万円のころの僕に伝えたいのは、たぶんこれだけです。

そもそも「要望」は、1年でこれだけの数が出ます

「要望」がどのくらいの規模のものなのか、数字で見ておくと感覚がつかめます。財務省が公表している、去年の集計です。

令和8年度税制改正要望の状況について
(各府省庁から提出された要望(8月29日付)の単純集計)
要望項目数 合計215/廃止・縮減項目数 合計23/うち金融庁の要望項目数 23(廃止・縮減は0)
(注)各府省庁の項目数には重複しているものも含んでいる。(重複排除ベースで、要望項目数146、廃止・縮減項目数13)

出典:財務省「令和8年度税制改正要望の状況について」(府省庁別の一覧表から抜き出して並べました)

1年で215項目。そのうち金融庁の分が23項目でした。これが毎年8月末に一斉に出て、12月の大綱で取捨選択されるという流れです。

ひとつ注意が必要なのは、同じ表にある「廃止・縮減項目数 23」は、各府省庁が「この特例をやめたい・縮めたい」と自分から出した要望の数だということです。落ちた項目の数ではありません。要望が何本通って何本落ちたかは、この集計からは分かりません。分かるのは、12月の大綱を1本ずつ読み合わせたときだけです。

今回(令和9年度)の金融庁の要望は、財務省のページで一覧できます。要望事項が20項目、既存の制度を見直す事項が1項目。その一覧のNo.1が「NISAの利便性向上等」です。私たちの家計に近そうなものを、いくつか挙げておきます。

No. 項目名 税目
1 NISAの利便性向上等 所得税
7 死亡保険金の相続税非課税限度額の引上げ 相続税
15 金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大) 所得税
16 生命保険料控除制度の拡充の恒久化等 所得税
(見直し1) 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の廃止 贈与税

※財務省「令和9年度税制改正要望(金融庁)」の一覧より抜粋(2026年9月2日閲覧)。これらもすべて要望の段階であり、決定ではありません。

ここで気づいてほしいのは、「拡充してほしい」という要望と並んで、「廃止する」という見直しの項目も同じ表に載っているということです。要望のニュースは良い話だけが切り取られて広まりがちですが、実際の資料には両方が並んでいます。

そして「廃止」のほうも、まったく同じで要望の段階です。いま急いで手続きをする理由にはなりません。この記事で見ている「同じ年に戻す」の話と、段階はまったく同じところにあります。

NISAはいま、どこまで来ているのか

要望書には、いまの実績と目標も書かれています。

いまの実績 目標
NISA総口座数 2,821万口座 令和9年末時点で3,400万口座
NISA買付額の合計 71.4兆円 令和9年末時点で56兆円

※実績は金融庁「NISA利用状況調査」(令和7年12月末時点)。目標は「国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針」による。いずれも、財務省サイトに掲載されている金融庁の要望事項の調書「令和9年度税制改正要望事項(新設・拡充・延長)(金融庁総合政策課)」に記載されている数字をそのまま引用しています(8ページの広報資料のほうには載っていません)。

口座数は目標に対してあと579万口座、買付額はすでに目標を上回っています。「利便性向上」という言葉が毎年出てくる背景には、こういう目標があります。ただ、この数字は「みんながやっているから自分も」という理由にはなりません。始めるかどうかは、それぞれの家計の状況で決めることです。

これから制度ニュースを見るときの、3つの見分け方

ここまでの話を、次に似たニュースを見たときにすぐ使える形にまとめます。見分けるときに見るのは「日付」と「言葉」の2つだけ。それで、下の①②③のどこにいるかが分かります。

段階 いつ出るか 記事に出てくる言葉のサイン
① 要望 毎年8月末ごろ 「要望」「要望項目」「〜を講ずること」「検討案」「省庁が求める」
② 大綱 毎年12月ごろ 「税制改正大綱」「与党が決定」「閣議決定」「〜する。」(言い切りの形)
③ 法律 翌年3月ごろ成立・公布/施行はそのあと 「成立」「公布」/「施行」「◯年◯月から適用」

※12月の大綱は、与党が決める「税制改正大綱」と、そのあと閣議決定される「税制改正の大綱」の2本立てです。この記事で数を数えたのは、後者(令和7年12月26日 閣議決定)のほうです。また③は、成立・公布の日と、実際に始まる施行の日が分かれます(こどもNISAは令和8年3月31日成立・公布で、口座が開けるのは令和9年1月1日以後)。

③の「施行」まで来て、はじめて実際のルールになります。今回のNISAの話は①です。記事のなかに「要望」という言葉が出てきたら、それは「まだ決まっていない」のサインだと考えてください。

⚠️ 要望のニュースを理由に、しないほうがいい3つ

  1. 先回りして売る……「同じ年に戻るなら、いま売っても大丈夫」は、まだ成り立ちません。いま売れば、枠が戻るのは翌年です
  2. 先回りして買う……「制度が良くなるらしいから」は、投資する金額を決める理由になりません
  3. 積立の設定を変える……要望の段階でやることは、原則としてありません

特に1つめは注意が必要です。NISA口座で売却しても、その年の年間投資枠は戻りません。課税口座で利益が出ている状態で売れば、そちらには税金がかかります。決まっていないルールを前提にした行動は、決まらなかったときに取り返せません。

ふくお × ねこた
ねこた
ねこた

要望・大綱・法律の3段階、覚えたっす。でも自分、12月の大綱が出るまでソワソワしちゃいそうっす。何かやっとくことないっすか?

ふくお

やることはないよ。強いて言うなら、12月ごろに大綱のニュースを1回だけ見るって決めておくくらいかな。それまでの3か月、この話を追いかけても、自分の口座には何も起きないんだ。

ふくお
ねこた
ねこた

でも、もし通ったら自分にも関係あるっすよね?そのときは何かしたほうがいいんすか?

ふくお

そこも落ち着いて考えてほしいな。あの要望は「入替をしやすくする」ためのもので、しかも金融庁自身が注記で「年間投資可能額が360万円以下となり得るのは令和11年以降」って書いてる。残っている総枠が、その年に買いたい額より少なくなってから意味を持つ話なんだ。まだ枠がたっぷり残っているなら、通っても通らなくても、やることは変わらないよ。

ふくお
ねこた
ねこた

なんか、すごく気が楽になったっす。ニュース見るたびに焦らなくていいんすね。自分、今日は何もしないっす!

ふくお

それでいいと思うよ。長期で続けるうえでいちばんもったいないのは、決まってもいない話で手を動かしてしまうことなんだ。ニュースは読む、でも制度のニュースを理由に設定は触らない。それでちょうどいいよ。

ふくお

まとめ|「要望」と書いてあったら、まだ決まっていません

8月末に出たのは、金融庁からのお願いです。同じ中身のお願いは去年も出ていて(資料にも【継続要望】と書かれています)、去年はそこだけが、閣議決定された大綱に載りませんでした。いまのルールは、売った分の生涯枠が簿価の分だけ使えるようになるのは翌年から。8月31日の前と後で、何も変わっていません。

  • 2026年8月31日に出たのは「令和9年度 税制改正要望項目」=要望であって決定ではない
  • いまのルールは「翌年以降、売却した商品の簿価の分だけ復活」(金融庁の説明)のまま。戻るのは生涯枠で、年360万円の年間投資枠は売っても増えない
  • 去年も同じ中身の要望が出て、閣議決定された大綱には「復活」「非課税保有限度額」「当年」が0回だった
  • 要望が通っても、その年に買える上限は年間投資枠の最大360万円のまま
  • 金融庁自身が「年間投資可能額が360万円以下となり得るのは 令和11年以降」と注記している(同じ一文の後半には「今年度の改正が必要」ともある)
  • 今日は何もしない。要望の段階でやることは、原則としてありません
  • 制度ニュースを見たら、記事のなかに「要望」「大綱」「法律(成立・施行)」のどれが書いてあるかを1回だけ確かめる
  • 気になるなら、12月ごろに大綱のニュースを1回だけ見ると決めておく
  • 売却と枠の関係をもう一度整理したいときは 含み益は、非課税枠を1円も使っていません を読み返す

💡 「売ったら枠はどうなるのか」を、もう一度きちんと整理したい方へ

NISAが増えてきた。売ったほうがいい?|含み益は、非課税枠を1円も使っていません戻ってくるのは簿価だけ、という数え方の話から

📅 要望ではなく、すでに決まった改正のほうを知りたい方へ

2026〜2027年、NISAはこう変わる。初心者が知っておきたい2つの変化要望ではなく、すでに大綱に載った変化だけをまとめています

※この記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の購入・売却をすすめるものではありません。今後の税制改正の内容について、当ブログが予測・保証するものではありません。

よくある質問(FAQ)

Q. 「NISAで売った枠がその年のうちに復活する」というのは本当ですか?

A. 2026年9月時点では、決まっていません。2026年8月31日に金融庁が公表した「令和9年度 税制改正要望項目」に、「非課税保有限度額の当年中の復活」という要望として入っている段階です。金融庁の資料の図でも、これは「検討案」と表記されています。今後どうなるかは、12月ごろの税制改正大綱と、その後の国会の審議で決まります。

Q. では、いまのルールはどうなっていますか?

A. 売った分の枠が使えるのは翌年からです。金融庁のNISA特設ウェブサイトには「2024年からのNISAでは、商品を売却した場合、翌年以降売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能になります。」と書かれています。復活するのは簿価、つまり買ったときの金額の分です。なお、戻るのは生涯で使える非課税保有限度額(総枠1,800万円)のほうで、年360万円の年間投資枠は売っても増えません。

Q. 去年も同じ要望が出ていたというのは本当ですか?

A. はい。2025年8月に公表された「令和8(2026)年度税制改正要望について」の3ページ目に、「③ 投資商品の入替をしやすくするための、非課税保有限度額の当年中の復活」と記載されています。今年の資料にも、この項目には【継続要望】と明記されています。同じ項目に並んでいた「つみたて投資枠における対象年齢等の見直し」と「対象商品の拡充等」は、閣議決定された令和8年度税制改正の大綱に記載されましたが、この③については記載がありませんでした(当ブログが大綱121ページの全文を機械的に確認)。

Q. もし通ったら、年間360万円より多く買えるようになりますか?

A. その点は要望に含まれていません。金融庁の資料の図には、現状の側にも検討案の側にも「年間投資枠の範囲 最大360万円」と書かれています。要望されているのは、生涯で使える非課税保有限度額(1,800万円)が戻るタイミングであって、1年に買える上限額ではありません。

Q. この要望は、誰にとって意味がある話ですか?

A. 要望書の言葉では「投資商品の入替をしやすくするため」とされています。去年の資料にその文言があります。また今年の資料の注記には「新NISA(令和6年に制度開始)の年間投資可能額が360万円以下となり得るのは 令和11年以降」とあります。残っている総枠が、その年に買いたい額より少なくなってから意味を持つ話なので、まだ枠に余裕がある人にとっては当面の影響はないと考えられます。なお同じ一文の後半で、金融庁は「投資家の制度の予見可能性を高め、金融機関のシステム対応のため十分な期間を確保するためには今年度の改正が必要」とも書いています。

Q. 12月の大綱に載れば、そこで確定ですか?

A. 大綱は「方針の決定」で、法律はそのあとです。実際にルールとして動き出すのは、翌年の国会で改正法が成立し、施行されてからになります。ニュースを見るときは「要望」「大綱」「成立・施行」のどの言葉が使われているかを確かめると、いまどの段階かが分かります。

Q. 要望が出たので、いったん売って買い直しておいたほうがいいですか?

A. おすすめしません。いま売れば、枠が戻るのは翌年です。決まっていないルールを前提に売買すると、そのルールが実現しなかったときに取り返せません。また課税口座で利益が出ていれば税金がかかりますし、売買のタイミングによる損得を当ブログが予測することもできません。税金の個別の取り扱いは、税務署または税理士にご確認ください。

Q. NISAについての要望は、毎年出ているのですか?

A. 金融庁の要望書には、平成21年度改正から令和8年度改正まで18年度分の要望経緯が並んでいます。「NISAの創設」「NISAの法制化」「NISAの恒久化等」「つみたてNISAの創設等」などが年度ごとに記載されており、令和9年度の要望はこれに続くものです。毎年なんらかの要望が出ている、というのが実際のところです。

Q. 要望は、どのくらいの数が出るものですか?

A. 去年(令和8年度)は、全省庁の単純集計で要望項目数215、廃止・縮減項目数23でした(財務省公表・重複排除ベースでは146と13)。この「廃止・縮減項目数」は、各府省庁が自分から「この特例をやめたい」と出した要望の数で、落ちた項目の数ではありません。そのうち金融庁の要望項目は23項目(廃止・縮減は0)でした。今回(令和9年度)の金融庁の分は、要望事項20項目と見直し事項1項目で、NISAは一覧のNo.1に置かれています。

Q. 要望が通れば、NISAは「有利な制度」になるということですか?

A. 制度の使い勝手の話と、投資の結果の話は別のものです。枠が戻るタイミングが変わっても、値動きそのものは変わりません。NISA口座の中で持っている投資信託や株式が値下がりすれば元本割れは起こりますし、非課税という仕組みは損失が出たときに助けてくれるものではありません。過去の制度改正の経緯も、将来の運用成果を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

Q. この記事の内容は、いつまで有効ですか?

A. 12月ごろの税制改正大綱で状況が変わる可能性があります。本記事は2026年9月時点で公開されている資料に基づいています。大綱の内容が明らかになった時点で、当ブログでもあらためて確認する予定です。制度の最新の内容は、必ず金融庁・財務省などの公式資料でご確認ください。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却をすすめるものではありません。記事中の内容は2026年9月時点で公開されている資料(金融庁「令和9(2027)年度 税制改正要望について」2026年8月、財務省「令和9年度税制改正要望(金融庁)」、「令和8年度税制改正の大綱」令和7年12月26日閣議決定、金融庁NISA特設ウェブサイト等)に基づくものです。本記事で紹介した要望は決定事項ではなく、今後の税制改正の内容や成立の見通しについて当ブログが予測・保証するものではありません。投資には元本割れの可能性があり、過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。グラフの金額は当ブログが公表条件から計算した試算で、公表値ではありません。制度の最新の内容は必ず公式資料でご確認ください。税金の個別の取り扱いは、税務署または税理士にご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。
詳細は 免責事項 をご確認ください。

最終更新日:2026年9月23日

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