9月のはじめ、「2026年度の最低賃金が出そろった」というニュースが流れました。全国の平均は1,177円。去年より56円上がります。厚生労働省の報道発表の見出しも「~答申での全国加重平均額は昨年度から56円引上げの1,177円~」です。
ただ、その見出しの下にある表をひらくと、少し様子が違って見えます。「令和8年10月1日」と書かれているのは、47都道府県のうち15だけでした。残りは10月2日以降、11月、12月と順番に切り替わります。いちばん最後は沖縄県の12月2日です。
この記事は、賃上げの是非を論じる記事ではありません。自分に適用されるのはどの県の金額で、それはいつから上がるのかと、自分の時給はどう数えればいいのか。この2つを、法律の条文と厚生労働省の資料で確かめるための記事です。
- 「10月から最低賃金が上がる」と聞いたのに、届いた給与明細の時給が去年と同じだった
- 時給で働いていて、自分の時給が新しい最低賃金を上回っているのか確かめたい
- 自分の県の最低賃金が、結局いつから何円になるのか分からないままになっている
- 時給ではなく月給なので、自分が最低賃金を上回っているのか数え方が分からない
- 手当がいろいろ付いているけれど、どれを足して比べればいいのか自信がない
→ ひとつでも当てはまったら、この記事が「自分の県の日付」と「自分の時給の数え方」を確かめるお手伝いをします。
- 2026年度の最低賃金のうち、10月1日から上がるのは47都道府県のうち15だけだということ
- 日がずれるのは各県の都合ではなく、最低賃金法に「公示の日から起算して三十日を経過した日」と書いてあるから
- 最低賃金と比べる金額は「支給総額」ではないこと。除外される6つの中身と、その出どころが2か所に分かれていること
- 月給の人が使う割り算は「一年間における一月平均所定労働時間数」だということ(厚生労働省令)
- 最低賃金を下回る取り決めは、双方が合意していても法律上は無効になること(最低賃金法4条2項)
ふくおさん、ニュースで「10月から最低賃金アップ」ってやってたっす。自分のバイト代も10月から上がるってことっすよね?
上がるよ。ただ「10月から」がそのまま当てはまるとは限らないんだ。厚生労働省が9月3日に出した表を数えてみると、10月1日に切り替わるのは47都道府県のうち15。残りの32はもっとあとなんだよ。
えっ、そんなにバラバラなんすか。じゃあ一番遅いところはいつっすか?
沖縄県の12月2日だね。報道発表にも「令和8年10月1日から令和8年12月2日までの間に順次発効される予定です。」と書いてある。この記事が公開される10月12日の時点だと、まだ19府県が切り替わっていない計算になるんだ。
自分の県がどっちに入ってるのか、どうやって調べるんすか。
職場に貼ってある紙か、労働局のサイトに載っている公示だね。あとここは大事なんだけど、見るのは住んでいる県じゃなくて、働いている事業場がある県だよ。県をまたいで通勤している人は、勤務先のほうを見てね。
うーん、なんで県ごとに違うんすか。同じ日にそろえたほうが分かりやすいのに。
そこがこの記事のいちばん面白いところでね。ずれる理由は、法律に手続きが書いてあるからなんだ。答申のあとに公示して、異議を申し出る期間を置いて、決定して、そこから30日。この段取りの起点が県ごとに違うから、後ろがばらけていく。順番に見ていこうね。

この記事を書くために、厚生労働省の報道発表に付いていた別紙のPDFを開きました。47都道府県が縦に並んでいて、いちばん右の列が「発効日(予定)」です。上から目で追っていって、手が止まりました。10月1日、10月29日、12月1日、10月1日、10月14日、10月30日……。そろっていなかったのです。
それまで僕は、最低賃金は10月に全国でいっせいに切り替わるものだと、なんとなく思っていました。毎年8月ごろに「今年は何円アップ」というニュースがあって、10月になると新しい金額になる。その程度の理解でした。表を数えてみるまで、自分がどれだけ雑に覚えていたか分かっていませんでした。
数えた結果は、10月中が37、11月が7、12月が3。その10月の37のうち、1日ちょうどはたったの15でした。同じ「2026年度の最低賃金」なのに、最初の県と最後の県では2か月以上の開きがありました。この記事は、その表を数えたところから始まっています。
2026年度の最低賃金は、全国の平均で1,177円になります
まず全体の数字です。厚生労働省は2026年(令和8年)9月3日、「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」という報道発表を出しました。見出しは「~答申での全国加重平均額は昨年度から56円引上げの1,177円~」です。
同じ発表の「答申のポイント」には、こう書かれています。
「47都道府県で、54円~65円の引上げ(引上げ額が65円は1県、64円は1県、63円は2県、62円は2県、61円は4県、60円は4県、59円は5県、58円は4府県、57円は7県、56円は11道県、55円は3県、54円は3都府県)」
「改定額の全国加重平均額は1,177円(昨年度1,121円)」
「全国加重平均額56円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で2番目の高さ」
「最高額(1,280円)に対する最低額(1,085円)の比率は84.8%(昨年度は83.4%。なお、この比率は12年連続の改善)」
出典:厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(令和8年9月3日)
いちばん高いのは東京都の1,280円、いちばん低いのは宮崎県の1,085円です。同じ1時間の仕事でも、働く場所によって195円の差があることになります。
⚠️ ここで出てくる金額と日付は、2026年9月3日に公表された「答申」の内容です。答申された額は、都道府県労働局での異議申出の手続きを経て、都道府県労働局長が決定し、公示した時点で確定します。この記事を公開した10月12日の時点では、すでに発効した28都道府県ぶんは確定していますが、未発効の19府県は、異議申出の状況等により日付が変わる可能性が残っています。厚生労働省の別紙にも「発効日は、答申公示後の異議の申出の状況等により変更となる可能性有」と注記されています。最終的な金額と日付は、必ず勤務先の事業場がある都道府県の労働局の公示でご確認ください。
56円という数字は、どこから来たのでしょうか
最低賃金は、国がひとつの数字を決めて全国に配る仕組みではありません。目安を出す会議と、実際に金額を決める会議が別になっています。
まず2026年(令和8年)7月28日、厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会が「目安」を答申しました。見出しは「~ 目安はAランク54円、Bランク56円、Cランク56円~」です。全都道府県を経済実態に応じてA・B・Cの3ランクに分け、ランクごとに引上げ額の目安を示す仕組みで、Aランクが6都府県、Bランクが28道府県、Cランクが13県という内訳でした。
そのうえで、この目安を参考にしながら、各都道府県の地方最低賃金審議会が調査・審議して答申を出します。ここが大事なところで、目安は上限でも下限でもありません。厚生労働省の発表にも、こう書かれています。
「仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均は1,176円となります。この場合、全国加重平均の上昇額は55円(昨年度は66円)となります。また、引上げ率に換算すると4.9%(昨年度は6.3%)となります。」
出典:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(令和8年7月28日)
実際に出そろった答申は、1,177円・56円でした。目安どおりなら1,176円・55円だったところ、1円ぶん上振れしたことになります。中身を数えてみると、47都道府県のうち33が目安額を上回る引上げを答申していました(当ブログの集計)。引上げ率に直すと、56円 ÷ 1,121円で約5.0%です(当ブログの計算。厚生労働省が示した目安どおりの場合の4.9%と比べた数字です)。
つまり「国が56円と決めた」のではなく、国が目安を示し、47の審議会がそれぞれ答申した結果、平均すると56円になったという順番です。だから金額も日付も、県ごとに違うものになります。
「10月1日から」なのは、47のうち15だけです
先に、ひとつ決めておくことがあります。適用されるのは、住んでいる県ではなく、働いている事業場がある県の最低賃金です。公示の書き出しがそうなっていて、「1 適用する地域 佐賀県の区域」「2 適用する使用者 前号の地域内で事業を営む使用者」「3 適用する労働者 前号の使用者に使用される労働者」と並びます(佐賀県の例)。厚生労働省も「地域別最低賃金は、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、セーフティネットとして各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます」としています。県をまたいで通勤している方は、勤務先の県の金額と日付を見てください。以下この記事で「自分の県」と書いているのは、すべて勤務先の事業場がある県のことです。
ニュースの見出しは「10月から」でそろっています。ところが報道発表の本文は、こう書いています。
「答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、令和8年10月1日から令和8年12月2日までの間に順次発効される予定です。」
「順次」です。別紙に載っている47都道府県の発効日(予定)を、当ブログで数えてみました。
10月中に切り替わるのが37、11月が7、12月が3。そのうち「10月1日ちょうど」は15でした。北海道・宮城県・栃木県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・新潟県・富山県・岐阜県・愛知県・三重県・大阪府・兵庫県・香川県の15です。
そして10月2日から11日までの間に、さらに13府県が切り替わります。長野県・岡山県(10月2日)、群馬県・石川県・滋賀県・和歌山県・鳥取県(10月3日)、福井県・奈良県・福岡県(10月4日)、山口県(10月8日)、島根県(10月10日)、広島県(10月11日)です。
この記事が公開される2026年10月12日の時点で、すでに切り替わっているのは28都道府県、まだ切り替わっていないのは19府県という計算になります(発効日が予定どおり進んだ場合)。その19府県は次のとおりです。
| 都道府県 | 発効日(予定) | 改定前 | 改定後(引上げ額) |
|---|---|---|---|
| 秋田県 | 10月14日 | 1,031円 | 1,090円(+59円) |
| 静岡県 | 10月15日 | 1,097円 | 1,154円(+57円) |
| 福島県 | 10月16日 | 1,033円 | 1,094円(+61円) |
| 茨城県 | 10月18日 | 1,074円 | 1,136円(+62円) |
| 宮崎県 | 10月24日 | 1,023円 | 1,085円(+62円) |
| 鹿児島県 | 10月25日 | 1,026円 | 1,090円(+64円) |
| 青森県 | 10月29日 | 1,029円 | 1,090円(+61円) |
| 高知県 | 10月29日 | 1,023円 | 1,086円(+63円) |
| 山形県 | 10月30日 | 1,032円 | 1,092円(+60円) |
| 大分県 | 11月1日 | 1,035円 | 1,096円(+61円) |
| 山梨県 | 11月1日 | 1,052円 | 1,113円(+61円) |
| 徳島県 | 11月1日 | 1,046円 | 1,103円(+57円) |
| 愛媛県 | 11月1日 | 1,033円 | 1,093円(+60円) |
| 長崎県 | 11月2日 | 1,031円 | 1,087円(+56円) |
| 佐賀県 | 11月15日 | 1,030円 | 1,095円(+65円) |
| 京都府 | 11月16日 | 1,122円 | 1,180円(+58円) |
| 岩手県 | 12月1日 | 1,031円 | 1,090円(+59円) |
| 熊本県 | 12月1日 | 1,034円 | 1,092円(+58円) |
| 沖縄県 | 12月2日 | 1,023円 | 1,086円(+63円) |
※厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額答申状況」(令和8年9月3日公表)をもとに当ブログが作成。発効日は予定であり、変更されることがあります。
⚠️ 表に勤務先の県があれば、10月の給与明細が去年と同じ時給でも、それは間違いとは限りません。まだ新しい最低賃金の効力が生じていないからです。最低賃金ちょうどの時給で働いている場合、発効日をまたいだ月は、その日を境に基準になる金額が変わります。実際の計算や締め日との関係は、勤務先の給与規定によって異なります。
⚠️ 逆に、表に勤務先の県がなければ、10月12日までに発効済みの28都道府県のどれかです。10月1日の15は上に挙げたとおりで、残る13府県は10月2日から10月11日までの間に発効します。こちらに当てはまる場合、発効日を過ぎていることになるので、時給が変わっていなければ、自分の県の正確な日付を確かめたうえで勤務先か都道府県労働局にご確認ください。
もうひとつ、数えているうちに見えてきたことがあります。あとから切り替わる県ほど、引上げ額が大きい傾向です。
当ブログが別紙を集計した結果(2026年9月11日時点)
- 10月1日に発効する15都道府県の引上げ額は平均55.9円。うち中央最低賃金審議会の目安額を上回ったのは15のうち7
- 10月12日時点でまだ発効していない19府県の引上げ額は平均60.4円。うち目安額を上回ったのは19のうち18
- 「10月1日を0日とした発効日までの日数」と「引上げ額」の相関係数は0.585(1に近いほど「遅い県ほど大きい」という関係が強いことを示します)
※当ブログの計算です。ここでの「平均」は都道府県ごとの引上げ額の単純平均で、厚生労働省の56円は労働者数で重みづけした加重平均なので、性質が違います。目安を大きく超える金額を決めるほど審議に時間がかかりうる、また引上げ幅が大きい県では第14条第2項の「別に定める日」として発効日を後ろに定めることも考えられますが、この集計だけで因果関係を断定することはできません。
言いかえると、切り替わりが遅い県ほど、切り替わったあとの1時間あたりの上がり幅は大きい、という形になっています。ただし発効が遅ければ、その金額で働く月数は、その年のうちは短くなります。「遅いぶんお得」ということではなく、上がり幅は大きいが効き始めるのが遅い、という2つが同時に起きている、という読み方です。
待つほど上がり幅が大きいって、ちょっと救われるっす。まあ、その年に上がった時給で働く月は短くなっちゃうっすけど。でも、そもそもなんでこんなに日がバラけるんすか。
ここからが本題だね。答申が出たら、そのまま次の月から適用、というわけにはいかないんだ。間に「異議を申し出る期間」と「30日」が法律で挟まっている。この段取りが県ごとに少しずつずれるから、出口の日もずれていくんだよ。
それって条文に書いてあるんすか? なんとなく慣例みたいなものだと思ってたっす。
書いてあるよ。最低賃金法の第14条第2項にね。しかもこの条文、読むと前倒しはできないことまで分かるんだ。次で見てみよう。
日がずれるのは、法律に手続きが書いてあるからです
ニュースでは「都道府県労働局長が決める」で終わってしまいますが、その手前と後ろには決まった段取りがあります。最低賃金法を順番に読むと、こうなっています。
「三十日を経過した日」と書いてある条文
いちばん大事なのが第14条第2項です。少し長いので、発効に関わる部分だけを引用します。
「第十条第一項の規定による地域別最低賃金の決定及び第十二条の規定による地域別最低賃金の改正の決定は、前項の規定による公示の日から起算して三十日を経過した日(公示の日から起算して三十日を経過した日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、(中略)その効力を生ずる。」
読みどころは、かっこの中です。「三十日を経過した日後の日であつて当該決定において別に定める日があるとき」。つまり別の日を決めてもいいけれど、それは30日を経過した日より後でなければならないということです。
発効日は、うしろにずらすことはできても、前に動かすことはできません。「10月1日にそろえたほうが分かりやすいのに」と思っても、公示が遅ければ10月1日にはできない、という仕組みになっています。
その前に「15日」もあります
もうひとつ、第11条にも期間の定めがあります。第1項で意見の要旨を公示し、第2項では、その意見に係る地域の労働者またはこれを使用する使用者が「前項の規定による公示があつた日から十五日以内に、厚生労働大臣又は都道府県労働局長に、異議を申し出ることができる。」。そして第4項で、厚生労働大臣または都道府県労働局長は「第一項の規定による公示の日から十五日を経過するまでは、前条第一項の決定をすることができない。」と定めています。
同じ第4項には、もう一文が続きます。「第二項の規定による申出があつた場合において、前項の規定による最低賃金審議会の意見が提出されるまでも、同様とする。」。異議が出れば、審議会の意見が出るまで決定できない。日がばらける理由は、ここにもあります。
実際の公示文で確かめてみます。佐賀労働局が2026年(令和8年)9月1日に出した公示には、異議申出の期限が「令和8年9月16日まで」と書かれていました。9月1日から9月16日は、ちょうど15日です。前の年の公示(令和7年8月26日)も期限は9月10日で、やはりちょうど15日。徳島労働局の令和7年度の公示(令和7年9月1日)も期限は9月16日でした。条文どおりに運用されていることが分かります。
この2つを足すと、意見の要旨の公示から発効まで最短でも45日かかる計算になります(15日+30日。当ブログの計算です)。実際にはもっと長く、佐賀県は令和8年度で公示から発効まで75日、令和7年度は87日。徳島県の令和7年度にいたっては122日かかっていました。
⚠️ 「去年うちの県は何月だったか」を見ておくと、だいたいの見当がつきます。令和7年度の佐賀県は11月21日発効、徳島県にいたっては年をまたいで2026年1月1日でした。2026年度も佐賀県は11月15日、徳島県は11月1日の予定です。「毎年10月に上がる」という感覚のほうが、実態とずれている県もあるということです。
上がったかどうかは、「支給総額 ÷ 働いた時間」では分かりません
自分の県の発効日が分かったら、次は自分の時給です。ここで多くの人がつまずくのが、比べる金額が「支給された合計」ではないという点です。
厚生労働省の最低賃金特設サイトは、「対象となる賃金は?」のページでこう書いています。
「労働者に支払われる賃金のうち、最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金です。残業代やボーナスは含まれませんので、注意が必要です。」
【最低賃金の対象とならない賃金】
(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4)所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
出典:厚生労働省 最低賃金特設サイト「対象となる賃金は?」(2026年9月11日確認)
ボーナスも残業代も入りません。通勤手当も家族手当も入りません。つまり、明細のいちばん下にある「支給合計」を働いた時間で割っても、最低賃金と比べる数字にはならないということです。
厚生労働省は、月給制の人の数え方を具体例で示しています。
この1,000円は厚生労働省の設例の数字です。2026年度はどの都道府県も1,085円以上なので、同じ条件(18万円・年2,000時間)なら、実際にはどの県でも最低賃金を下回ります。
合計22万円もらった月でも、最低賃金と比べるのは18万円のほうです。そしてこの18万円を、その月の労働時間ではなく12か月分にしてから年間の所定労働時間で割る点が大事なところです。
時給の人・日給の人は、割り算が変わります
そもそも割り算が必要なのは、賃金が「時間以外」で決まっている人です。最低賃金法施行規則の第2条第1項は「賃金が時間以外の期間又は出来高払制その他の請負制によつて定められている場合は(中略)当該賃金を時間についての金額に換算して、法第四条の規定を適用するものとする」と書いていて、時間給についての号はありません。つまり時給で働いている人は、契約している時給額をそのまま自分の県の最低賃金額と比べます。1,050円の時給なら、1,050円と比べるだけです。
ただし「通勤手当が付いているから、足して1,100円ぶん」という数え方はできません。通勤手当・家族手当・精皆勤手当は、あとで見るとおり公示で算入しないと決まっているからです。日給で働いている人は、同じ第2条第1項の第1号で「一日の所定労働時間数(日によつて所定労働時間数が異なる場合には、一週間における一日平均所定労働時間数)」で割ると定められています。次に見る月給の割り算は、そのうち第3号の話です。
月給の人が使う割り算は、法律で決まっています
この「12か月分にしてから」の根拠は、最低賃金法施行規則の第2条第1項第3号です。
「月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異なる場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額」
かっこの中が要点です。月ごとに所定労働時間が違う場合は、1年を平均した時間で割る。ここを自己流でやると、答えが動いてしまいます。
同じ18万円でも、割る数を間違えると結論が変わります(当ブログの試算)
- 所定労働時間が短い月(140時間)で割ると 180,000円 ÷ 140時間 = 約1,285円
- 所定労働時間が長い月(176時間)で割ると 180,000円 ÷ 176時間 = 約1,022円
- 規則どおり1年平均(約166.7時間)で割ると 180,000円 ÷ 166.7時間 = 約1,080円
※年間所定労働日数250日・1日8時間(年2,000時間)のケースで計算。1年平均の行は2,000時間÷12か月=166.66…時間で割っているため、ちょうど1,080円になります(厚生労働省の計算式と同じ結果です)。2月だけで計算すると高く出て、日数の多い月で計算すると低く出ます。そして2026年度の最低賃金はいちばん低い宮崎県でも1,085円なので、この18万円のケースは、短い月で割れば「上回っている」、規則どおり1年平均で割れば「下回っている」と、答えが逆になります。
「除外される6つ」は、出どころが2か所に分かれています
ここからは、調べていて少し驚いた話です。さきほどの6つは、全部が同じ場所に書いてあるわけではありません。
最低賃金法の第4条第3項は、算入しない賃金を3つの号に分けています。第1号と第2号は「厚生労働省令で定めるもの」。そして第3号は「当該最低賃金において算入しないことを定める賃金」です。
その省令(最低賃金法施行規則第1条)を最後まで読むと、書いてあるのは5つだけでした。第1項が「臨時に支払われる賃金及び一月をこえる期間ごとに支払われる賃金」の2つ、第2項が時間外・休日・深夜の割増部分の3つ。合わせて5つです。
⚠️ 省令には「精皆勤手当」「通勤手当」「家族手当」という言葉が一度も出てきません。この3つは、第3号の「当該最低賃金において算入しないことを定める賃金」として、各都道府県の公示のほうに書かれています。
さきほどの(1)〜(6)でいうと、(1)から(5)までの5つが省令、(6)の「精皆勤手当、通勤手当及び家族手当」が各都道府県の公示です。6つのうち最後のひとつだけが手当3種類をまとめた項目で、しかも出どころが違う、という形になっています。
実物を見てみます。佐賀労働局が2026年(令和8年)9月1日に出した公示には、箇条書きでこう並んでいました。
「1 適用する地域 佐賀県の区域」
「2 適用する使用者 前号の地域内で事業を営む使用者」
「3 適用する労働者 前号の使用者に使用される労働者」
「4 前号の労働者に係る最低賃金 1時間 1,095円」
「5 この最低賃金において賃金に算入しないもの 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当」
「6 効力発生の日 令和8年11月15日」
出典:佐賀労働局「佐賀地方最低賃金審議会の意見に関する公示」(佐賀労働局一般公示第19号・令和8年9月1日)。金額1,095円・発効日11月15日は、この記事の表と一致します。徳島労働局の令和7年度の公示も同じ書式で、第5項の文言は同一でした。
⚠️ 比べる相手は、地域別最低賃金だけとは限りません。特定の産業には、地域別より高い「特定(産業別)最低賃金」が定められていることがあります。最低賃金法第6条第1項は「労働者が二以上の最低賃金の適用を受ける場合は、これらにおいて定める最低賃金額のうち最高のものにより第四条の規定を適用する。」と定めており、厚生労働省も、両方が同時に適用される労働者には使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとしています。自分の職場に特定(産業別)最低賃金があるかどうかは、厚生労働省の「特定(産業別)最低賃金全国一覧」か、都道府県労働局の賃金課・室で確認できます。
ここが、この記事でいちばんお伝えしたかったところです。金額・除外する手当・効力発生の日は、すべて自分の県の公示という1枚の紙に並んで書いてあります。検索して出てくるまとめ記事を読み比べなくても、労働局のサイトでその1枚を開けば、自分に関係する3つの情報がそろいます。

少し前に、給与明細から引かれているお金の中身という記事を書きました。健康保険、厚生年金、雇用保険、所得税、住民税。引かれる側を一つずつたどった記事です。
書き終わってしばらくして気づいたのは、僕はあの記事で「支給」の側をほとんど見ていなかったということでした。控除の欄ばかり丁寧に追いかけて、その上にある基本給と手当を、時間で割ってみるという発想がなかったのです。
今回この記事のために厚生労働省のケーススタディを写経してみて、ようやく腑に落ちました。手取りの話をするなら、その前に「自分の1時間はいくらか」がある。上がった56円が自分に届いているかどうかは、そこを数えないと分かりません。増えたお金の置き場所を考えるのは、その次です。
最低賃金を下回る取り決めは、合意していても無効です
数えてみたら下回っていた、という場合の話もしておきます。最低賃金法の第4条第2項は、こう定めています。
「最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。」
厚生労働省の「最低賃金制度とは」も、同じことをもっとはっきり書いています。
「仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。」
出典:厚生労働省「最低賃金制度とは」(2026年9月11日確認)
「同意したのだから仕方がない」とはならない、ということです。同じページには、地域別最低賃金額以上を支払わない場合に50万円以下の罰金という罰則があることも書かれています(最低賃金法第40条)。
ここは自己判断で結論を出さず、勤務先の事業場がある都道府県の労働局の賃金課・室、または最寄りの労働基準監督署に相談してください。時給の数え方は勤務形態によって変わるため、明細を持って相談するのがいちばん早道です。
職場に貼ってある紙に、発効日も書いてあります
ここまで「自分の県の公示を見よう」と書いてきましたが、実はもっと近いところにも同じ情報があります。最低賃金法の第8条です。
「最低賃金の適用を受ける使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければならない。」
使用者には周知する義務があります。周知すべき中身も、省令に書いてあります。最低賃金法施行規則第6条は「一 適用を受ける労働者の範囲及びこれらの労働者に係る最低賃金額」「二 法第四条第三項第三号の賃金」「三 効力発生年月日」の3つを挙げています。ここでも、算入しない手当は「法第四条第三項第三号の賃金」という言い方で別立てになっています。休憩室や更衣室に貼ってある紙、あるいは配られたリーフレット。そこに、勤務先の県の発効日が書いてあるはずです。
派遣で働いている場合は、派遣先の県の金額です
もうひとつ、間違えやすいところです。最低賃金法の第13条は、派遣中の労働者について「その派遣先の事業(中略)の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額により第四条の規定を適用する」と定めています。特設サイトのトップページも「派遣元ではなく、派遣先の最低賃金が適用されます」としています。
派遣会社の所在地でも、自分が住んでいる場所でもありません。実際に働きに行っている事業場がある県の金額と発効日を見ることになります。
⚠️ 最低賃金額そのものに、例外もあります。一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合について、最低賃金には減額の特例が用意されています。対象は「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方」「試の使用期間中の方」「基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方」「軽易な業務に従事する方」「断続的労働に従事する方」の5つです。ただし会社が自由に決められるものではなく、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることが条件とされています(厚生労働省 最低賃金特設サイト)。許可を受けているかどうかが分からないときは、都道府県労働局に確認できます。
上がった分を、どこに置くか
ここからは、お金の置き場所の話です。全国平均で56円という引上げが、実際にどれくらいの金額になるのかを見てみます。
時給が56円上がったときの、ひと月・1年(当ブログの計算)
- 月60時間働いている人(週15時間ほど) → ひと月 3,360円 1年で 40,320円
- 月80時間働いている人(週20時間ほど) → ひと月 4,480円 1年で 53,760円
- 月160時間働いている人(フルタイムに近い) → ひと月 8,960円 1年で 107,520円
※56円は全国加重平均の引上げ額で、実際の引上げ額は県ごとに54円~65円と幅があります。単純に時間を掛けた金額で、税金や社会保険料は考えていません。1年ぶんの金額は、12か月とも新しい時給で働いた場合のものです。発効が11月・12月の県では、2026年のうちに反映されるのは1〜2か月ぶんになります。
ひと月で見ると数千円です。ただ、1年を通すと4万円から10万円ほどになります。昇給したのに、お金が残らないのはなぜ?でも書いたことですが、増えた分は置き場所を先に決めておかないと、生活費に溶けて残りません。固定費が上がっていなければ、増えた分はまるごと残せる余地があるお金です。
置き場所の考え方はお金の置き場所は3つでいいにまとめています。まず生活防衛資金が薄いなら、そこを厚くするのが先です。そこが足りているなら、NISAのつみたて投資枠で毎月の積立額を少し増やす、という選び方もあります。ただし投資に回すお金は、当面使う予定のないお金に限ってください。投資信託には元本割れの可能性があり、増えることが約束されているわけではありません。
置き場所を決めるときに、先に見てほしいのは固定費のほうです。変動費は月によって動くので、増えた数千円をそこに置くと、増えたこと自体が見えなくなります。家賃・通信費・保険料といった毎月決まって出ていくお金が去年と同じなら、上がった分はまるごと別の場所に置ける、という考え方です。
投資に回す場合も、あわてる必要はありません。積立投資は長期で続けることを前提にした方法で、数か月で答えが出るものではないからです。NISAのつみたて設定は、毎月の金額をあとから変えられます。まず生活が回ることを確かめてから、余った分だけで十分です。投資信託は値動きのある商品で、元本割れの可能性があります。
⚠️ 時給が上がると、同じ時間だけ働いても年収が増えます。社会保険の加入や配偶者の扶養の条件にかかわる方は、労働時間の見直しが必要になることがあります。この「年収の壁」まわりの条件は「106万円の壁」がなくなる予定ですで整理しています。厚生労働省は社会保険の加入要件のうち賃金要件(月額8.8万円以上)について「2026年10月に賃金要件を撤廃予定」としており(2026年9月11日確認)、撤廃の時期は「法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断します」と説明しています。この記事の公開時点で実際にどうなっているかは、厚生労働省のページでご確認ください。なお健康保険の被扶養者の目安である年収130万円などは、この見直しとは別に残ります。勤め先や加入している健康保険によって扱いが変わるため、具体的な判断は勤務先、年金事務所、税の扶養については税務署または税理士にご確認ください。
整理すると、まず自分の県の日付を見て、次に自分の時給を数える、って順番っすね。時給の数え方で自信がないのは、どの手当を足すかっすけど。
そこは公示の「この最低賃金において賃金に算入しないもの」という項目を見れば一発だよ。そこに、精皆勤手当・通勤手当・家族手当と書いてある。そこに書かれていない手当は、毎月決まって出るものなら足す側になる、という読み方だね。
もし数えてみて足りてなかったら、どうすればいいんすか。言いにくいっすよ、そういうの。
その気持ちはよく分かる。ただ法律は「合意していても無効」と書いているから、遠慮する必要のない話なんだ。自分ひとりで切り出しづらいなら、労働基準監督署や都道府県労働局の賃金課・室という窓口がある。数え方が合っているかどうかから相談していいんだよ。
なるほどっす。で、無事に上がってたら、その分は貯金か投資に回す感じっすかね。
順番としては、まず生活防衛資金が薄いならそこ。足りているなら、残す先を先に決めておく。「余ったら貯める」だと、まず残らないからね。金額は小さくても、置き場所を決めるだけで結果が変わるよ。
まとめ:確かめるのは「自分の県の日付」と「自分の時給」の2つです
最低賃金のニュースは全国の平均で語られます。けれど実際に効いてくるのは、自分の県の日付と、自分の明細から数えた時給です。そのどちらも、探しにくい場所にはありません。
| 知りたいこと | 答え | 根拠 |
|---|---|---|
| 2026年度の全国平均は? | 1,177円(昨年度1,121円・56円の引上げ) | 厚生労働省 報道発表(令和8年9月3日) |
| いつから上がる? | 10月1日から12月2日までに順次。10月1日はうち15都道府県 | 同 別紙「答申状況」を当ブログが集計 |
| なぜ日がずれる? | 決定の公示から30日を経過した日に効力が生じるため | 最低賃金法 第14条第2項 |
| 前倒しはできる? | できない(別に定める日は「三十日を経過した日後の日」に限られる) | 同 第14条第2項かっこ書き |
| 比べる金額は? | 支給総額から6つを除いたもの | 最低賃金法 第4条第3項・同施行規則第1条・各都道府県の公示 |
| 月給の割り算は? | 一年間における一月平均所定労働時間数で割る | 同施行規則 第2条第1項第3号 |
| 下回っていたら? | 合意していても無効。差額の支払いが必要 | 最低賃金法 第4条第2項/厚生労働省 |
| 派遣の場合は? | 派遣先の事業場がある地域の金額 | 最低賃金法 第13条 |
| どこで確認する? | 職場の掲示(周知義務)/都道府県労働局のサイトに載る公示 | 最低賃金法 第8条・同施行規則第6条/同法 第11条第1項・同施行規則第7条(決定の公示は同規則第9条により官報) |
この記事の結論
- 2026年度の最低賃金で10月1日から上がるのは、47都道府県のうち15です。最後は沖縄県の12月2日です
- ずれるのは県の都合ではなく、「公示の日から起算して三十日を経過した日」という法律の定めがあるからです。しかも前倒しはできません
- 最低賃金と比べる金額は支給総額ではありません。通勤手当・家族手当・精皆勤手当・残業代・賞与などは除きます
- 月給の人は「一年間における一月平均所定労働時間数」で割ります。特定の月の時間で割ると答えが変わります
- 下回る取り決めは双方が合意していても無効で、差額を支払う必要があります
今日できる3つのこと
- 勤務先の事業場がある県の発効日を確かめてください(住んでいる県ではありません)。職場の掲示か、その県の労働局のサイトにある公示で分かります
- 直近の給与明細から、通勤手当と残業代を引いた金額を出してみてください。そこが出発点です
- その金額を、1年の平均所定労働時間で割ってみてください。自分の1時間の値段が出ます
この記事がすすめないこと
- ここでの計算だけで「違法だ」と結論を出すこと。勤務形態によって数え方は変わります。労働基準監督署または都道府県労働局の賃金課・室にご相談ください
- 増えるはずの金額を先に使ってしまうこと。発効日が変更されることもありますし、11月・12月発効の県では年内に反映される月数が限られます
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※この記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の購入・売却をすすめるものではありません。労働条件に関する個別のご相談は、労働基準監督署または都道府県労働局にお願いします。
よくある質問(FAQ)
Q. 自分の県がいつから上がるのか、どこで確認できますか?
A. 3つあります。①職場の掲示です。最低賃金法第8条は、使用者に「当該最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければならない」と義務づけています。周知すべき中身も省令に書いてあり、最低賃金法施行規則第6条は「一 適用を受ける労働者の範囲及びこれらの労働者に係る最低賃金額」「二 法第四条第三項第三号の賃金」「三 効力発生年月日」の3つを挙げています。②勤務先の事業場がある都道府県の労働局のサイトにある公示です。金額・除外する手当・効力発生の日が1枚にまとまっています。③厚生労働省の最低賃金特設サイトの全国一覧です。いずれも、まとめ記事より確実です。
Q. 10月の給与明細が去年と同じ時給でした。間違いですか?
A. 間違いとは限りません。2026年度の場合、10月1日に発効するのは47都道府県のうち15です。残りの32は、10月2日から12月2日までの間に順次切り替わる予定で、この記事を公開した10月12日の時点でまだ切り替わっていないのは19府県です(いちばん早いのが秋田県の10月14日)。まず勤務先の事業場がある県の発効日を確かめてください。ただし、発効日を過ぎているのに改定前の時給のままなら、確認したほうがよい状態です。
Q. なぜ県ごとに金額が違うのですか?
A. 法律がそう決めているからです。最低賃金法第9条第2項は「地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」としています。同条第3項では、生計費を考慮するにあたって「生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」とも定めています。2026年度は最高額(東京都1,280円)に対する最低額(宮崎県1,085円)の比率が84.8%で、厚生労働省によれば「この比率は12年連続の改善」とのことです。
Q. 発効日が月の途中です。その月の時給はどうなりますか?
A. 効力が生じるのはその日からです。最低賃金法第14条第2項は、改正の決定が「公示の日から起算して三十日を経過した日(中略)から、その効力を生ずる」と定めています。したがって発効日以降に働いた分から、新しい金額が基準になります。実際の計算や締め日との関係は勤務先の給与規定によって異なるため、具体的には勤務先、または都道府県労働局の賃金課・室にご確認ください。
Q. 通勤手当も、最低賃金の計算に入らないのですか?
A. 入りません。厚生労働省の最低賃金特設サイトは、最低賃金の対象とならない賃金として「(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当」を挙げています。この3つは厚生労働省令ではなく、各都道府県の公示に書かれています(最低賃金法第4条第3項第3号「当該最低賃金において算入しないことを定める賃金」)。実際、佐賀労働局の公示には「5 この最低賃金において賃金に算入しないもの 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当」とあります。「通勤手当があるから最低賃金を上回っている」という数え方はできないということです。
Q. 月給で働いています。最低賃金は関係ありますか?
A. 関係あります。最低賃金法施行規則第2条第1項第3号は「月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異なる場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額」と定めています。厚生労働省の計算例では、合計22万円の月から通勤手当5,000円と時間外手当35,000円を除いた18万円を使い、(180,000円×12か月)÷(250日×8時間)=1,080円と算出しています。特定の月の労働時間で割ると答えが変わるので、1年平均で計算してください。
Q. アルバイトやパートでも対象ですか?
A. 対象です。厚生労働省は「地域別最低賃金は、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、セーフティネットとして各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます」としています。なお地域別最低賃金とは別に、特定の産業を対象とした「特定(産業別)最低賃金」もあり、こちらは18歳未満・65歳以上の方などには適用されないなど、範囲が異なります。両方が適用される場合は、高いほうの金額が基準になります(最低賃金法第6条第1項「労働者が二以上の最低賃金の適用を受ける場合は、これらにおいて定める最低賃金額のうち最高のものにより第四条の規定を適用する。」)。
Q. 派遣で働いています。どの県の金額が適用されますか?
A. 派遣先の事業場がある地域の金額です。最低賃金法第13条は、派遣中の労働者について「その派遣先の事業(中略)の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額により第四条の規定を適用する」と定めています。厚生労働省の特設サイトも「派遣元ではなく、派遣先の最低賃金が適用されます」としています。派遣会社の所在地でも、自分の住所地でもありません。
Q. 最低賃金を下回ってもよい場合はあるのですか?
A. 減額の特例という仕組みがあります。厚生労働省は、①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方 ②試の使用期間中の方 ③基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方 ④軽易な業務に従事する方 ⑤断続的労働に従事する方 について、「使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件に個別に最低賃金の減額の特例が認められています」としています。会社が自分の判断で減額できる制度ではありません。
Q. 計算したら最低賃金を下回っていました。同意して働いている以上、仕方がないのでしょうか?
A. そうはなりません。最低賃金法第4条第2項は「(前略)労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。」としています。厚生労働省も「仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ(中略)最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。」と説明しています。地域別最低賃金額以上を支払わない場合には50万円以下の罰金という罰則もあります(同法第40条)。ただし数え方には勤務形態ごとの注意点があるため、まずは労働基準監督署または都道府県労働局の賃金課・室にご相談ください。
Q. 時給が上がると、働く時間を減らしたほうがよいのでしょうか?
A. 一律には決まりません。同じ時間だけ働けば年収は増えるので、社会保険の加入要件や配偶者の扶養の条件にかかわる方は、影響を確かめる必要があります。ただしその条件は2026年に見直しが進んでおり、勤め先の規模や加入している健康保険によっても扱いが違います。当ブログでは「106万円の壁」がなくなる予定ですで整理していますが、具体的な判断は勤務先または年金事務所にご確認ください。
Q. この記事の内容は、いつまで有効ですか?
A. 本記事は2026年9月11日に確認した資料に基づいています。金額と発効日は、確認した時点では答申の段階のもので、厚生労働省の別紙にも「発効日は、答申公示後の異議の申出の状況等により変更となる可能性有」と注記されています。最低賃金は毎年改定されるため、2027年度には金額も日付も変わります。いっぽう最低賃金法第4条・第8条・第13条・第14条や施行規則第1条・第2条といった仕組みの部分は、毎年変わるものではありません。金額と日付は厚生労働省および各都道府県労働局で、最新のものをご確認ください。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却・保有を推奨するものではありません。記事中の最低賃金額と発効日は、2026年(令和8年)9月3日に厚生労働省が公表した「答申」の内容にもとづくもので、都道府県労働局長の決定・公示によって確定します(公開日の10月12日時点で発効済みの28都道府県は、すでに確定しています)。同省の別紙には「発効日は、答申公示後の異議の申出の状況等により変更となる可能性有」と注記されており、最終的な金額と日付は都道府県労働局長の決定・公示によります。必ず勤務先の事業場がある都道府県の労働局でご確認ください。記事中の集計・試算(発効日ごとの都道府県数、10月12日時点の発効済み/未発効の数、引上げ額の平均と相関係数、時給に換算した金額、56円が1年でいくらになるかの計算)は、明示した前提に基づく当ブログの計算です。労働条件に関する個別の判断は、労働基準監督署または都道府県労働局の賃金課・室にご相談ください。また、記事の後半で触れた資産形成の話について、投資信託には元本割れの可能性があり、将来の運用成果を保証するものではありません。記事中の内容は2026年9月11日に確認した公表資料(厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(令和8年9月3日)および別紙「令和8年度地域別最低賃金額答申状況」、同「最低賃金制度とは」、厚生労働省 最低賃金特設サイト「対象となる賃金は?」「最低賃金のチェック方法は?」「適用される対象者は?」「派遣労働者の最低賃金は?」「最低賃金の周知義務は?」、e-Gov法令検索「最低賃金法」(第4条・第6条・第8条・第9条・第11条・第12条・第13条・第14条・第40条)「最低賃金法施行規則」(第1条・第2条・第6条・第7条・第9条)、佐賀労働局「佐賀地方最低賃金審議会の意見に関する公示」(一般公示第19号・令和8年9月1日/一般公示第30号・令和7年8月26日)、徳島労働局「徳島地方最低賃金審議会の意見に関する公示」、厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(令和8年7月28日)、同「社会保険の加入対象の拡大について」)に基づいています。社会保険の賃金要件の撤廃は、2026年9月11日時点で厚生労働省が「予定」と表記していた事項です。制度は改正されることがあります。最終的なご判断はご自身の責任でお願いします。
詳細は 免責事項 をご確認ください。
2026年9月11日に資料を確認し、2026年10月12日に公開しました














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