※2026年7月時点の情報です。統計の数値は執筆時点で公表されている各年の平均値です。
- 「老後2000万円」と聞くたびに、漠然と胸がざわつく
- 2000万円なんて貯められる気がしなくて、考えるのをやめてしまった
- そもそもこの数字が本当なのか、誰も説明してくれない
- 自分の場合はいくら必要なのか、見当もつかない
→ ひとつでも当てはまったら、この記事が「数字の正体」を確かめるお手伝いをします。
- 「2000万円」の出どころ=2019年の金融庁報告書に実際に書かれていること
- 同じ計算を最新データでやり直すと、答えは毎年変わるという事実
- それでも油断できない、直近の赤字幅が広がっているという現実
- 平均ではなく「自分の数字」を出すためのシンプルな式
ふくおさん、「老後2000万円」ってやつ、あれ本当なんすか?自分、2000万なんて貯まる気がしないっす…
その数字にドキッとするよね。でもね、あの2000万円って「誰にでも当てはまる必要額」じゃないんだ。ある年の平均データから出てきた、一つの計算例なんだよ
えっ、計算例っすか?ニュースだと「2000万ないと老後破産」みたいな空気だったっすよ
そこが今日の本題。実は同じ計算を別の年のデータでやると、答えがぜんぜん違う数字になるんだ。ゼロに近い年もあれば、1500万を超える年もある。数字の出どころから順番に見ていこう
答えが変わる計算…?なんか気になるっす。お願いするっす
うん。先に言っておくと、「だから安心」でも「だから危険」でもなくて、最後は自分の数字を知るのがいちばんという話になるよ。そこまでセットで付き合ってね
「老後2000万円」って、誰がいつ言ったの?
出どころは、2019年6月に金融庁の金融審議会がまとめた報告書「高齢社会における資産形成・管理」です。当時、大臣が報告書の受け取りを拒否するという異例の展開もあって大きなニュースになり、「2000万円」という数字だけが独り歩きしました。
報告書に実際に書かれているのは、こういう計算です。
夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯では、平均で毎月の収入が約20.9万円・支出が約26.4万円。つまり毎月約5.5万円の赤字になる。この赤字を貯蓄の取り崩しでまかなうと、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円が必要になる——という試算です。(金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書・2019年6月/元データは2017年の総務省家計調査)
ここで大事なポイントが2つあります。
- ①「平均の姿」にすぎない:報告書自身が、この数字は平均であり「不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる」と、はっきり書いています。つまり「全員2000万円必要」とは、元の報告書も言っていないのです
- ②元データは2017年の1年分:計算のもとになったのは、2017年の家計調査の平均値です。ある1年の平均を30年分に引き延ばした計算なので、元にする年が変わると、答えも変わります
同じ計算を最新データでやり直すと、答えは毎年変わる
では実際に、同じ計算式(毎月の不足額 × 12か月 × 30年)を、各年の家計調査のデータでやり直してみます。対象は65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均です。
📊 同じ計算式でも「老後に足りない額」は毎年変わる
65歳以上・夫婦のみ無職世帯の平均収支をもとに、毎月の不足額×12か月×30年で換算
| 年 | 毎月の不足額(平均) | 30年分に換算すると |
|---|---|---|
| 2017年(報告書の元データ) | ▲54,519円 | 約1,963万円 ≒「2000万円」 |
| 2020年 | 黒字(不足なし) | — |
| 2021年 | ▲18,525円 | 約667万円 |
| 2022年 | ▲22,270円 | 約802万円 |
| 2023年 | ▲37,916円 | 約1,365万円 |
| 2024年 | ▲34,058円 | 約1,226万円 |
| 2025年(最新) | ▲42,434円 | 約1,528万円 |
※総務省「家計調査」各年平均より。2020年に統計の世帯区分が「夫65歳以上・妻60歳以上」から「65歳以上の夫婦のみ」へ変更されたため、2017年と2020年以降は厳密には同じ条件の比較ではありません。
見てのとおり、「老後に足りない額」は毎年変わります。コロナ禍で外出が減った2020年は平均で黒字になり、”不足ゼロ”の年すらありました。つまり——
- 「2000万円」は2017年のスナップショットから出てきた数字
- 同じ式でも、元にする年によってゼロ〜2000万円まで答えが動く
- だから「2000万円」を固定の目標額として背負い込む必要はない

2019年にこのニュースが流れたとき、僕は投資を始めて間もない頃でした。テレビから「老後2000万円」という言葉が聞こえてくるたびに、当時の残高とのあまりの差に、そっと通帳を閉じたのを覚えています。「今のペースで間に合うんだろうか」と、根拠のない焦りだけがふくらんでいきました。
変わったのは、あるとき報告書の元の文章を読んでみてからです。そこにあったのは「毎月約5.5万円の赤字が30年続いたら」という足し算と掛け算で、しかも「人によって大きく異なる」と書いてありました。怖かったのは2000万円という金額そのものではなく、中身を知らないまま数字だけを浴びていたことだったんだと、そのとき気づきました。
じゃあ「気にしなくていい」の?——そうとも言い切れません
ここまで読むと「なんだ、2000万円って大げさだったのか」と思うかもしれません。ただ、この記事は「安心してください、老後資金は要りません」という話でもありません。表をもう一度見てほしいのですが、2021年以降、赤字幅は年々広がる傾向にあります。
つまり実態はこうです。「2000万円」という数字は固定の真実ではない。でも、平均で見れば年金だけでは足りない年が多いのも事実。数字に振り回されるのも、数字から目をそらすのも、どちらも少しもったいない。ではどうするか——次の章が、この記事のいちばん大事なところです。
うーん、結局「2000万は嘘だけど足りない年が多い」って、どっちなんすか?モヤモヤするっす
そのモヤモヤの正体はね、ずっと「平均」の話をしているからなんだ。平均の家計は、ねこたの家計じゃないでしょ?だから平均の答えをいくら眺めても、自分の不安は消えないんだよ
たしかに…。じゃあ自分の場合の数字って、どうやって出すんすか?難しい計算は苦手っすよ
大丈夫、使うのは引き算と掛け算だけ。報告書がやった計算と同じことを、自分の数字でやればいいんだ。次で見てみよう
不安の正体は「自分の数字を知らないこと」
報告書の計算式は、実はとてもシンプルでした。これをそのまま自分用に置き換えます。
(老後の毎月の生活費 − 年金などの毎月の収入見込み)× 12か月 × 年数
たとえば生活費25万円・年金見込み21万円なら、不足は月4万円。30年で約1,440万円。生活費を20万円に抑えられるなら、不足はゼロ。——同じ式でも、暮らし方でこれだけ変わります。
式に入れる数字は、2つとも調べられます。
① 年金の見込み額を知る
公的年金の平均月額は、厚生年金(会社員などだった人。国民年金分を含む)で約15.0万円、国民年金のみで約5.9万円です(厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」)。ただしこれも平均で、働き方や年収、夫婦の組み合わせで大きく変わります。
- 自分の見込み額は「ねんきん定期便」か「ねんきんネット」で確認できます。毎年誕生月に届くハガキ、またはスマホからの登録で、将来の受給見込み額の目安がわかります
- 会社員か自営業か、共働きかどうかで、世帯の年金額は月10万円台〜20万円台後半まで幅があります。だからこそ「平均」でなく自分の数字を見る価値があります
② 老後の生活費をイメージする
こちらは現役のうちから正確にはわかりません。でも、いま毎月いくらで暮らしているかを知っていれば、その延長でイメージできます。毎月の支出をまだ把握していないなら、月5分のざっくり家計簿で「収入・支出・固定費」の3つだけ押さえるところからで十分です。
この式のいいところは、不安が「漠然とした2000万円」から「毎月の収支の話」に分解されることです。毎月の話になれば、固定費を見直す・積立を続けるといった、いま打てる手につながります。
今日からできる準備は、3つのステップ
「自分の数字」がざっくり見えたら、やることは特別なものではありません。このブログでずっとお伝えしてきた、お金の基本の積み重ねです。
- 支出を軽くする:がんばる節約より、固定費の見直しが先。月5,000円軽くなれば、老後30年分で180万円の不足が消える計算です
- お金の置き場所を分ける:「生活費・もしも・未来」の3つの口座に分けて、生活防衛資金を確保。守りが固まると、積立を続けやすくなります
- 未来のお金は時間をかけて育てる:老後までの年数が長いほど、複利と長期投資の力を借りられます。NISAのつみたて投資枠でインデックスファンドを毎月コツコツ買う形なら、月3万円×30年のシミュレーションのように、時間を味方につけた準備ができます
「もう40代・50代だから遅いのでは」と感じた方は、40・50代からのNISAは遅い?をどうぞ。65歳まででも15〜25年あり、決して手遅れではないことを数字で確かめられます。なお、投資には元本割れの可能性があるので、必ず生活防衛資金を確保したうえで、余裕資金の範囲で行うのが大前提です。

僕は30代なので、老後の答え合わせはまだずっと先です。だから「僕の老後資金はこれで完璧です」とは言えません。ただ、式を知ってから変わったことがひとつあります。「老後○○万円必要」という見出しを見ても、ざわつかなくなったことです。あの数字は誰かの平均の計算例で、僕の家計の答えは僕の収支からしか出ない——そう分かっているだけで、ニュースとの距離感がまるで違います。
いま僕がやっているのは、毎月の積立を淡々と続けることと、年に一度ねんきん定期便を眺めることくらいです。それでも「何もわからないまま怖がっていた頃」と比べれば、気持ちはずっと軽くなりました。不安をなくすのは大きな貯蓄額ではなく、自分の現在地を知っていることなんだと、いまは思っています。
スッキリしたっす!2000万円は2017年の平均から出た計算例で、答えは毎年変わる。でも直近は赤字ぎみだから、自分の数字で考えるのが大事…ってことっすね
完璧なまとめだね。金額を当てるゲームじゃなくて、(生活費−年金見込み)×年数という式を自分の手に持っておくことが大事なんだ
自分、さっそくねんきんネット登録してみるっす。あと家計簿…はざっくりのやつでいいんすよね?
うん、3つの数字だけのざっくり版で十分だよ。式に入れる材料が揃えば、不安の大部分は「やることリスト」に変わるからね
「2000万貯めなきゃ」って思ってた時より、なんか動ける気がするっす
それがいちばんの収穫だよ。大きな数字にすくむより、今月の一歩のほうがずっと強いからね
まとめ|「2000万円」に振り回されず、自分の数字を持つ
- 「老後2000万円」の出どころは2019年の金融庁報告書。2017年の平均データ(毎月約5.5万円の赤字×30年)から出た一つの計算例で、報告書自身が「人によって大きく異なる」と明記しています
- 同じ計算を各年のデータでやり直すと、ほぼゼロ(2020年)〜約1,963万円(2017年)まで答えが動きます。2000万円は固定の真実ではありません
- ただし直近は物価上昇もあり、2025年の平均では毎月約4.2万円の赤字(30年換算で約1,528万円)。「何もしなくていい」わけでもありません
- 大事なのは平均ではなく自分の数字。式は(毎月の生活費 − 年金見込み)× 12か月 × 年数だけです
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※本記事は2026年7月時点で公表されている統計をもとにした一般的な情報です。将来の物価・年金額・必要額を予想するものではなく、特定の金額を目標とすることや特定の行動を推奨するものではありません。
よくある質問(FAQ)
Q. 結局、「老後2000万円問題」は嘘だったのですか?
A. 嘘というより、「2017年の平均データで計算した一つの例」が、固定の必要額のように広まってしまったのが実態に近いです。報告書自身が「不足額は人によって大きく異なる」と書いており、同じ計算を別の年のデータで行うと、ほぼゼロの年から約2,000万円の年まで答えは変わります。
Q. 最新のデータだと、いくら足りないことになりますか?
A. 2025年の家計調査(65歳以上・夫婦のみの無職世帯の平均)では毎月約4.2万円の不足で、同じ式で30年に換算すると約1,528万円です。単身(65歳以上)では毎月約3万円の不足で、30年換算で約1,080万円になります。ただしいずれも平均であり、前提が変われば数字も変わります。
Q. 自分に必要な額は、どう計算すればいいですか?
A. (老後の毎月の生活費 − 年金などの毎月の収入見込み)× 12か月 × 年数で、ざっくりした目安が出せます。年金の見込み額はねんきん定期便・ねんきんネットで、毎月の生活費はざっくり家計簿で確認できます。精密な計画が必要になったら、FPなど専門家に相談する方法もあります。
Q. 年金は平均でいくらもらえるのですか?
A. 厚生労働省の資料(令和6年度)では、厚生年金(国民年金分を含む)の平均月額は約15.0万円、国民年金のみでは約5.9万円です。ただし現役時代の働き方や年収で大きく変わるため、平均よりも自分の見込み額を確認するほうが確実です。
Q. 40代・50代からの準備では、もう遅いですか?
A. 遅くありません。65歳までに15〜25年あれば、積立と複利の効果を活かしやすくなります。実際、金融庁の調査では、NISA口座がいちばん多い年代は50代です(金融庁「NISA口座の利用状況調査」)。詳しくは40・50代からのNISAは遅い?で数字とともに解説しています。
Q. 老後資金の準備に、投資は必須ですか?
A. 必須ではありません。預金や働く期間の調整、支出の見直しも立派な準備です。ただ、インフレで物価が上がるとお金の実質的な価値は目減りしやすいため、時間に余裕がある人ほど、ドルコスト平均法での投資信託の積立のように、時間を味方につける選択肢を検討する価値はあります。投資には元本割れの可能性がある点は忘れずに。
📎 参考にした主な公的情報・一次情報
- 金融庁:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(2019年6月・公表ページ)
- 同報告書 本文PDF(毎月約5.5万円の不足・20年で約1,300万円/30年で約2,000万円の記述)
- 総務省統計局:家計調査報告(2025年平均・65歳以上無職世帯の家計収支)
- 厚生労働省:厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和6年度・平均年金月額)
- 日本年金機構:ねんきんネット(自分の年金見込み額の確認)
※統計の数値は各年の平均値であり、個々の世帯の状況とは異なります。最新の内容は各機関の公式ページでご確認ください。
※本記事は2026年7月時点の情報をもとにした一般的な解説であり、特定の金融商品・投資手法や特定の行動を推奨するものではありません。将来の物価・年金・運用成果を保証するものではなく、投資には元本割れの可能性があります。投資判断はご自身の責任でお願いします。
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最終更新日:2026年7月28日













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