病気やケガで会社を長く休むことになったら、そのあいだの給料はどうなるのか。考えたことがないまま働いている人は、たぶん多いと思います。
この記事では、そこで実際に出てくるお金を、公的な資料の数字で一つずつ確かめていきます。読み終わるころには、収入が止まったときに自分の場合いくら入るのかと、足りない分をどう用意しておけばいいのかが、金額で見えるようになるはずです。
- 長く休むことになったら、収入がゼロになると思っている
- 「傷病手当金」という言葉は聞いたことがあるが、金額の見当がつかない
- 就業不能保険をすすめられたが、必要かどうか判断できない
- 入社したばかりだから、たぶん対象外だろうと思っている
- 働けなくなったときのことを考えると不安なのに、調べるのが怖くて後回しにしている
→ ひとつでも当てはまったら、この記事が「いくら入るのか」を数字にするお手伝いをします。
- 働けなくなったときに出てくるお金が、2段構えになっていること
- 傷病手当金が「月給の3分の2」ではなく「1日いくら」で決まる仕組み
- 同じ人でも、休んだ月によって受け取る額が変わる理由
- 入社1年目の人・会社を辞めた人が、どう扱われるのか
- 公的な支えと生活費の差から、用意しておく現金を決める考え方
ふくおさん、もし病気で長く会社を休むことになったら、給料ってどうなるんすか? 自分、そこ考えたことなかったっす。
会社の決まりにもよるけど、休んでいる間の給料は基本的に出ないことが多いんだ。ただ、そこで収入がまるごとゼロになるかというと、そうでもないんだよ。
えっ、どこかからお金が出るんすか?
健康保険から傷病手当金というお金が出るんだ。毎月の給与明細から健康保険料が引かれているよね。あれが効いてくる場面のひとつだよ。
聞いたことはあるっす。たしか給料の3分の2くらい、だったっすかね。
そう覚えている人は多いね。近い額にはなるんだけど、実際の計算は「1日いくら」で決まるんだ。だから同じ人でも、休んだ月によって受け取る額が変わる。今日はそこまで一緒に見ていこうか。

2026年の夏、僕は高額療養費制度の記事を書くために、厚生労働省の資料を何日も読んでいました。医療費には月ごとの上限があって、思っていたよりずっと手前で頭打ちになる。そこまでは、数字で確かめられました。
ただ、資料を閉じたあとに、手つかずの部分がひとつ残りました。医療費の上限は分かった。では、そのあいだ給料はどうなるのか。
そこは調べていなかったんです。「たぶん、何かあるんだろう」くらいの解像度で止まっていました。守りの記事を書いておきながら、いちばん生活に近い穴を自分の中に残していたことになります。
今回はその穴を埋めるつもりで調べました。支えはちゃんと用意されていました。ただ、金額の決まり方は、僕が漠然と思っていたものとは違っていました。
給料が止まっても、いきなりゼロになるわけではありません
会社員が業務外の病気やケガで働けなくなったとき、公的な支えは2段構えになっています。手前にあるのが健康保険の傷病手当金、その先にあるのが公的年金の障害年金です。
ここで混ざりやすいのが高額療養費制度です。あちらは出ていく医療費に上限をつける仕組みで、収入を補うものではありません。入院そのものの費用は高額療養費で頭打ちになりますが、その間に止まる給料は別の制度が支えます。「出ていくお金」と「入ってくるお金」で担当が分かれている、と考えると整理しやすくなります。
全国健康保険協会(協会けんぽ)は、傷病手当金の目的をこう説明しています。
傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
— 全国健康保険協会「傷病手当金」より
受け取るには、協会けんぽが挙げている4つの要件をすべて満たす必要があります。「健康保険に入っていれば自動的にもらえる」ものではない、という点は先に押さえておきたいところです。
- ① 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること(仕事や通勤が原因のものは労災保険のほうの対象になります。自宅療養の期間も対象ですが、「病気と見なされないもの(美容整形など)」は対象外です)
- ② 仕事に就くことができないこと(この判定は「療養担当者の意見等を基に、被保険者の仕事の内容を考慮して判断されます」と説明されています)
- ③ 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- ④ 休業した期間について給与の支払いがないこと(給与が出ていても傷病手当金の額より少なければ、その差額が支給されます)
傷病手当金は「月給の3分の2」ではありません
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。「給料の3分の2がもらえる」という覚え方は、金額としては近いのですが、決まり方が違います。
健康保険法99条2項は、傷病手当金の額をこう定めています。少し長いので、順番に分解します。
傷病手当金の額は、一日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した十二月間の各月の標準報酬月額…を平均した額の三十分の一に相当する額…の三分の二に相当する金額…とする。
— 健康保険法 第99条第2項(e-Gov法令検索)
つまり、こういう順番です。
- 直近12か月の標準報酬月額を平均する
- その平均額を30で割る(10円単位に整える)
- それに3分の2をかける(1円単位に整える)=1日あたりの額
- その1日あたりの額に、仕事に就けなかった日数をかける
もとになるのは月給そのものではなく、標準報酬月額という区分の金額です。これは4月・5月・6月の給与で決め直されるもので、給与明細の健康保険料と厚生年金保険料もこの数字から決まっています。仕組みは 給与明細から引かれているお金の中身 にまとめました。
協会けんぽが公式サイトに載せている計算例が分かりやすいので、そのまま引いておきます。
支給開始日:令和8年2月15日
標準報酬月額 令和7年3月〜令和7年8月まで16万円/令和7年9月〜令和8年2月まで18万円
① 平均した額 =(16万円×6+18万円×6)÷12 = 17万円
② その30分の1 = 17万円÷30 ≒ 5,670円(10円未満四捨五入)
③ 1日あたり支給額 = 5,670円×2/3 = 3,780円(1円未満四捨五入)
※この例で「月給の3分の2」と考えると17万円×2/3=113,333円ですが、実際は3,780円×休んだ日数です。30日なら113,400円、28日なら105,840円になります。
同じ人でも、休んだ月によって受け取る額が変わります
1日あたりの額が決まって、それに日数をかける。この仕組みだと、2月に休むか3月に休むかで受け取る額が変わります。標準報酬月額30万円の人で見てみます。
1日あたりは6,667円。待期を終えたあと、その月のすべての日が支給対象になったとすると、28日の月なら186,676円、31日の月なら206,677円です。その差は20,001円。「月給の3分の2だから20万円くらい」と思っていた人にとっては、2月に休んだ場合だけ13,324円足りないことになります。
標準報酬月額ごとの目安をまとめました。いちばん右の列ではなく、真ん中の「1日あたり」を覚えておくのが実用的です。何日休んだらいくらか、自分で計算できるようになります。
| 標準報酬月額 | 1日あたりの額 | 支給対象が30日分の場合 |
|---|---|---|
| 20万円 | 4,447円 | 133,410円 |
| 24万円 | 5,333円 | 159,990円 |
| 26万円 | 5,780円 | 173,400円 |
| 30万円 | 6,667円 | 200,010円 |
| 32万円 | 7,113円 | 213,390円 |
| 41万円 | 9,113円 | 273,390円 |
※直近12か月ずっと同じ標準報酬月額だった場合。健康保険法99条2項の端数処理どおりに計算しています(2026年9月時点)。休み始めの連続3日(待期)は支給の対象外なので、休み始めの月はこの表より3日分少なくなります。
⚠️ ここは「額面の話」です
傷病手当金そのものには、所得税も住民税もかかりません(健康保険法62条が「租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない」と定めていて、国税庁も「非課税所得であり、所得税は課されません」と説明しています)。ただし、休んでいる間も、健康保険料・厚生年金保険料と、前年の所得に対する住民税の支払いは続きます。その扱いは勤務先や加入先によって変わります。「額面の3分の2がそのまま手元に残る」と考えると、ずれが出ることがあります。ここは勤務先に確認してください。
同じ1か月休んだのに2万円違うんすか。なんかスッキリしないっす……。
日給で働いているのと同じ考え方だと思うと、腑に落ちるかもしれないね。1日いくらが決まっていて、それを休んだ日数ぶん受け取る。だから月の長さがそのまま効いてくるんだ。
……ってことは、「毎月これだけ入る」って決め打ちしちゃダメってことっすか?
そういうこと。覚えるなら月額じゃなくて「1日いくらか」のほうだよ。そこさえ分かっていれば、何日休んだらいくら、が自分で出せるからね。
最初の3日間は、支給の対象になりません
傷病手当金は、休んだ初日から出るわけではありません。連続する3日間(待期)があって、その後の4日目以降が対象になります。
この「待期3日」には、少しクセがあります。協会けんぽの説明はこうです。
待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。
待期3日間の考え方は会社を休んだ日が連続して3日間なければ成立しません。連続して2日間会社を休んだ後、3日目に仕事を行った場合には、「待期3日間」は成立しません。
— 全国健康保険協会「傷病手当金」より
つまり、土日をはさんで休んだ場合でも3日は数えられますし、有給を使った日も数えられます。逆に、「つらいけど1日だけ出社した」で連続が切れると、そこからやり直しになります。無理をして出社したほうが不利になり得る、という点は知っておく価値があります。
入社1年目でも、対象から外れるわけではありません
「12か月分の標準報酬月額を平均する」と聞くと、入社したばかりの人は対象外に思えます。そうではありません。法律のほうに、12か月に満たない場合の決まりが用意されています。
協会けんぽの場合は、次のいずれか低いほうを使って計算します。
- 支給開始日の属する月以前の、直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
- 全被保険者の標準報酬月額の平均額(協会けんぽが公表している区分では、支給開始日が令和7年4月1日以降の方は32万円。2026年9月時点の公表値で、健康保険法99条2項2号によりこの額は年度ごとに見直されます)
32万円で計算すると、1日あたりは7,113円。30日分で213,390円です。「低いほう」を使うので、直近の給料が32万円より高い人でも、この32万円のほうで計算されます。逆に、それより低い人は自分の標準報酬月額の平均のほうで計算されます。
⚠️ この32万円は、協会けんぽの数字です
健康保険法99条2項が「全被保険者」の平均としているとおり、この額は加入している保険者ごとに決まります。勤務先が健康保険組合に入っている場合は、組合が公表している額を確認してください。健康保険組合には独自の付加給付があり、協会けんぽより手厚い場合もあります。
実際にどのくらいの期間、受け取っているのか
制度の話だけだと現実味が薄いので、実際のデータも見ておきます。協会けんぽは毎年「現金給付受給者状況調査報告」を公表していて、令和6年度分は令和6年10月の傷病手当金受給者179,680件が対象です。
いちばん多い原因は精神及び行動の障害で39.15%。がんなどの新生物(14.49%)の倍以上です。しかもこの割合は「60歳未満の各階級で最も割合が高く、50歳未満では50%を超える」と報告書に書かれています。入院や手術をともなう場面だけの制度ではなく、心の不調で働けなくなったときにも実際に使われている——ということが数字に出ています。
(図の「その他」は、報告書に印字された数字ではなく、上位5分類以外を合計した残りです。)
期間のほうも見ておきます。
- 平均支給期間は171.75日(報告書の表記で約5.7ヶ月)。男性185.53日・女性157.63日(報告書の定義は「支給開始日から令和6年10月の申請の支給末日までの期間」で、受給が続いている人はここからさらに伸びます)
- 傷病別でいちばん長いのは精神及び行動の障害の215.28日
- 支給期間30日以下が24.96%と最も多い一方、541日以上も4.28%ある
- 支給件数のうち21.52%(38,675件)は、すでに会社を辞めた人への支給
平均の5.7か月という長さは、覚えておくと役に立ちます。生活防衛資金は生活費の3〜6か月分、という目安をこのブログでも紹介してきましたが、その3〜6か月という数字が、実際に休むことになる長さとだいたい釣り合っていることが分かります。ただし用意しておきたい現金は生活費まるごとではなく、傷病手当金では届かない差額のぶんです。長さの目安はこのデータ、金額の目安は次の章の引き算、と分けて考えると迷いません。
会社を辞めたあとも、続くことがあります
受給者の5人に1人が退職後の人だったのは、健康保険法104条に資格喪失後の継続給付という仕組みがあるからです。協会けんぽの説明を引きます。
資格喪失の日の前日(退職日等)までに被保険者期間…が継続して1年以上あり、被保険者資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態…であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができます。
ただし、一旦仕事に就くことできる状態になった場合、その後更に仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません。
— 全国健康保険協会「傷病手当金」より
省略した部分に大事な条件が入っています。この「継続して1年以上」を数えるとき、任意継続被保険者だった期間・共済組合の組合員だった期間・国民健康保険に加入していた期間は算入されません。転職や独立をはさんでいる場合は、通算できると思い込まないほうが安全です。
⚠️ 退職がからむときに、つまずきやすい3つ
- 退職日に出勤してしまうと「受けられる状態」から外れることがあります(挨拶回りのつもりでも出勤扱いになり得ます)
- 一度でも働ける状態に戻ると、そこで終わりです。在職中と違って、再開はできません
- 任意継続被保険者になっても、新しく発生した病気・ケガは対象外です。協会けんぽは「任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません」と明記しています
退職のタイミングは、体調だけでなくこの条件にも関わります。判断の前に、加入している健康保険の窓口に確認してください。
1年6か月の先は、要件を満たせば障害年金があります
傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。「通算」なので、途中で復帰して働いた日はカウントされません。休んだ日を足していって1年6か月、という数え方になります。なお健康保険法99条4項がこの1年6か月を定めているのは「同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては」なので、まったく別の病気やケガであれば、あらためて数え直すことになります。
その先で、要件を満たす場合に出てくるのが障害年金です。会社員なら、障害基礎年金と障害厚生年金の両方が対象になり得ます。
ただし、この2つが自動的にバトンタッチするわけではありません。傷病手当金の1年6か月は「支給を開始した日から通算」で数えますが、障害年金の障害認定日は日本年金機構の説明で「初診日から1年6カ月を過ぎた日」(1年6カ月以内に治った・症状が固定した場合はその日)とされていて、起点が違います。障害等級に当てはまらなければ障害年金は出ませんし、逆に両方の期間が重なることもあります。「1年6か月たてば自動的に次が始まる」とは考えないほうが安全です。
障害基礎年金の年金額(令和8年4月分から・昭和31年4月2日以後生まれの方)
| 等級 | 年金額 |
|---|---|
| 1級 | 1,059,125円+子の加算額 |
| 2級 | 847,300円+子の加算額 |
| 子の加算額 | 2人まで1人につき243,800円/3人目以降1人につき81,300円 |
※昭和31年4月1日以前生まれの方は1級1,056,125円・2級844,900円。子とは「18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子」です。
障害厚生年金の年金額(令和8年4月分から)
| 等級 | 年金額 |
|---|---|
| 1級 | 報酬比例の年金額×1.25 +〔配偶者の加給年金額 243,800円〕 |
| 2級 | 報酬比例の年金額 +〔配偶者の加給年金額 243,800円〕 |
| 3級 | 報酬比例の年金額(最低保障額 635,500円) |
※3級の最低保障額は昭和31年4月2日以後生まれの方の額。同年4月1日以前生まれの方は633,700円。報酬比例部分の計算では「厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します」とされています。
金額の感覚をつかむために、ひとつだけ換算しておきます。障害基礎年金2級の847,300円は、月あたり約70,608円。これは 自分の年金はいくら?|ねんきん定期便の見方 で扱った令和8年度の老齢基礎年金(満額)の月額と、同じ数字です。老後にもらう年金の満額と同じ水準が、要件を満たせば現役のうちから支えになる、という設計になっています。
受給要件のうち、初心者がいちばん誤解しやすいのは保険料の納付要件です。日本年金機構はこう書いています。
初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、…保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。ただし、初診日が令和18年3月末日までのときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
— 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」より
ポイントは「初診日の前日」で見る、という点です。具合が悪くなってから慌てて未納分を払っても、この要件には間に合いません。国民年金の保険料を払うのが難しい時期は、未納のまま放置せず免除の申請をしておく——それがここで効いてきます。免除期間は納付済期間と同じようにこの計算に入るからです。
⚠️ 障害年金について、この記事が書かないこと
- 等級に当てはまるかどうかの判断はしません。認定は障害認定基準にもとづく個別の判断です
- 「働いていたらもらえない」も「働けなければもらえる」もどちらも正確ではありません(3級は「労働が著しい制限を受ける」状態と説明されており、就労と両立し得ます)
- 年金額は毎年度改定されます。ここに書いた金額はすべて令和8年4月分からのもので、来年度は変わります。金額を調べるときは「何年度の額か」を必ず確かめてください
障害認定日に該当しなかった場合でも、その後症状が重くなったときに請求できる事後重症という仕組みがあります(この場合は請求日の翌月分から)。判断に迷ったら、年金事務所に相談してください。

今回いろいろ調べていて、6年前の自分のことを別の角度から思い出しました。コロナショックで口座が約50万円の含み損を抱えたとき、僕は売らずに持ち続けて、数か月かけて戻ってきた——という話は、これまでも何度か書いてきました。
ただ、あのとき売らずにいられた理由は、我慢強かったからではありません。毎月の給料が、止まらずに入っていたからです。
もし同じ時期に、病気で3か月休んでいたらどうだったか。想像してみると、たぶん僕は売っていたと思います。生活費が足りなければ、いちばん換金しやすいところから崩すしかありませんから。
ただ、これは僕ひとりの、あの時期の結果にすぎません。持ち続けたからといって必ず戻るわけではなく、元本割れのまま終わることもあります。
それでも今回、順番がひとつはっきりしました。長期で投資を続けられるかどうかは、相場ではなく「収入が止まったときにどうなるか」で決まる部分がある。だから僕は、傷病手当金の額を先に出して、そこに足りない分を現金で持つ、という考え方をするようになりました。
だから、まず「1日いくら」を出しておく
ここまでの内容を、行動に落とします。やることは3つだけです。
- 1日あたりの額を出す……まず自分の標準報酬月額を確かめる。給与明細に「標準報酬月額」の欄があればそこ、なければねんきん定期便に最近の月ごとの標準報酬月額(千円単位)が載っています。分かったら30で割って3分の2をかける(この記事の早見表からも読めます)
- 1か月あたりの目安と、毎月の生活費を並べる……1日あたりの額×30日と、いま出ていっているお金を比べる
- その差の大きさだけを見る……差が小さければ、追加で備えるものは多くありません。差が大きければ、そこが生活防衛資金や保険で埋めるべき穴です
この順番で見ると、「就業不能保険に入るべきか」という問いにも自分で答えを出しやすくなります。公的な支えでどこまで届くかが先で、民間の保険はその差を埋める道具、という順序です。考え方は 投資の前に、保険は必要? と同じで、保険は不安の大きさではなく足りない金額で決めるほうが決めやすくなります。
そのとき、差が2種類あることも意識しておくと考えやすくなります。ひとつは受給中の毎月の差(1日あたりの額×日数と、毎月の生活費の差)。もうひとつは、傷病手当金が通算1年6か月で終わったあと、障害年金の要件に当てはまらなかった場合の空白です。前者は現金で埋めやすく、後者は現金だけでは埋めにくい種類の差になります。民間の就業不能保険や所得補償保険が想定しているのは主に後者ですが、保障の対象や支払われる条件は商品によってまったく違います。自分がどちらの差を埋めたいのかをはっきりさせてから、その商品が本当にそこを埋めてくれるのかを確かめてください。
⚠️ 逆に、やらないほうがいいこと3つ
- 「たぶん出ないだろう」と決めつけて調べない……入社1年目でも、退職後でも、対象になる道はあります。要件を見ずに諦めるのがいちばんもったいない選択です
- 不安の大きさで保険を決める……差額を出さずに入ると、公的な支えと重なる部分にもお金を払い続けることになります
- 備えを全部、値動きのあるものに置く……いざというときに暴落と重なると、いちばん取り崩したくないタイミングで取り崩すことになります
自分、なんとなく「働けなくなったら終わり」って思ってたっす。
その不安は自然だと思うよ。ただ、公的な仕組みは思っているより手前に用意されているんだ。だから民間の保険を考えるのは、そのあとでいいんだよ。
じゃあ、いま自分がやることって何すか?
自分の1日あたりの額を出してみることだね。給与明細の健康保険料から標準報酬月額の見当がつくから、30で割って3分の2にすればいい。紙とスマホの電卓で3分あれば終わるよ。
それなら今日できそうっす! 数字が出れば、怖さも少し減りそうっすね。
そこなんだよ。分からないままだと不安はふくらむけど、金額になった時点で「用意する分」に変わるからね。そのあとで積立の話をすればいいんだ。
まとめ|収入が止まる不安は、金額にすると小さくなります
働けなくなったときのお金は、保険に入る前からすでに用意されています。まずはその額を出して、足りない分の大きさだけを測る。それがこの記事の言いたかったことです。
- 会社員の支えは2段構え。手前が健康保険の傷病手当金(支給を始めた日から通算1年6か月)、その先が要件を満たす場合の障害年金
- 傷病手当金は「月給の3分の2」ではなく、標準報酬月額の平均÷30の3分の2=1日あたりの額に、休んだ日数をかけて決まる
- だから同じ人でも月によって額が変わる。標準報酬月額30万円で、待期を終えたあとその月のすべての日が支給対象になった場合、28日の月186,676円・31日の月206,677円
- 最初の連続3日(待期)は対象外。有給や土日も待期に数えるが、途中で1日でも働くと成立しない
- 入社12か月未満でも対象。協会けんぽが公表している区分では32万円と自分の実績のうち低いほうで計算される
- 実際の平均支給期間は171.75日(約5.7か月)、原因の39.15%は精神及び行動の障害、21.52%は退職後の人への支給
- 給与明細の「標準報酬月額」欄か、ねんきん定期便に載っている月ごとの標準報酬月額を確かめる(月給そのものではなく、残業代や通勤手当も含めて決まる区分の金額です)
- その金額を30で割って3分の2。出てきた「1日あたりの額」をメモしておく
- 1日あたりの額×30日と、毎月の生活費を並べて、差がいくらかを確かめる
- 差の分だけ現金で持てているかを見る。足りなければ、生活防衛資金の考え方 を読み返して置き場所を決める
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※この記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資信託には元本割れの可能性があり、将来の運用成果を保証するものではありません。「0円」は口座開設料・口座管理料についてのもので、取引手数料や投資信託の信託報酬など、商品・取引に応じた費用は別途かかります。投資に回す前に確かめたいのは、手元の現金と生活防衛資金のほうです。各社のサービス内容・条件は2026年9月時点のもので、最新の内容は各社公式サイトでご確認ください。傷病手当金・障害年金の受給可否や具体的な金額は、ご加入の健康保険(協会けんぽ支部・健康保険組合)とお近くの年金事務所にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 入社してまだ1年たっていません。傷病手当金はもらえませんか?
A. 加入期間の長さそのものは、傷病手当金の要件になっていません。協会けんぽが挙げる要件は、業務外の病気やケガの療養であること・仕事に就くことができないこと・連続する3日間を含み4日以上休んだこと・その期間について給与の支払いがないこと、の4つです。標準報酬月額が12か月分そろっていない場合は、直近の実績の平均と、協会けんぽが公表している全被保険者の平均額(支給開始日が令和7年4月1日以降の方は32万円。2026年9月時点の公表値で、年度ごとに見直されます)のうち低いほうで計算されます。ただし、要件を満たすかどうかの最終的な判断は保険者が行うので、もらえると確約できるものではありません。ご加入の健康保険にご確認ください。
Q. 有給休暇を使って休みました。傷病手当金ももらえますか?
A. 有給を使った日は「給与の支払いがある日」なので、その日については支給されません。ただし待期の3日には有給の日も数えられます(協会けんぽは「待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません」と説明しています)。また、給与が支払われていても傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。有給が残っているなら先に使い、なくなってから傷病手当金に切り替える、という順番になることが多いです。
Q. いつ振り込まれますか? 休んだ月の給料日に入るのでしょうか。
A. 給料のように自動で入るものではありません。傷病手当金は休んだ期間が過ぎたあとに、自分で申請して受け取る仕組みで、申請書には療養担当者(医師など)の証明と事業主の証明が必要です。振込までにかかる時間は保険者や申請内容によって変わるので、加入先にご確認ください。なお申請には期限があります。協会けんぽは「健康保険給付を受ける権利は、受けることができるようになった日の翌日(消滅時効の起算日)から2年で時効になります。傷病手当金の消滅時効の起算日は、労務不能であった日ごとにその翌日となります」と説明しています。
Q. 傷病手当金に税金はかかりますか?
A. 所得税も住民税もかかりません。健康保険法62条が「租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない」と定めていて、国税庁のタックスアンサーでも「いずれも非課税所得であり、所得税は課されません」と説明されています。障害年金も同じで、国民年金法25条・厚生年金保険法41条2項がそれぞれ非課税を定めています(ただし書きで老齢基礎年金・付加年金・老齢厚生年金だけが除かれているので、課税されるのは老後にもらう年金のほうです)。なお、非課税なのは給付そのものについての話です。休んでいる間も、社会保険料と、前年の所得に対する住民税の支払いは続くので、手元に残る額はその分減ります。
Q. 会社を辞めたら、そこで終わりですか?
A. 終わりとは限りません。健康保険法104条に資格喪失後の継続給付という仕組みがあり、協会けんぽの説明では、退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失日の前日に現に傷病手当金を受けているか受けられる状態であれば、退職後も引き続き受けられます。実際、令和6年度の調査では支給件数の21.52%が退職後の人への支給でした。ただし「一旦仕事に就くことできる状態になった場合、その後更に仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません」と明記されているので、在職中のように再開はできません。また、退職後に任意継続被保険者になった場合、その期間中に新しく発生した病気・ケガは対象外です。
Q. 自営業・フリーランスにも傷病手当金はありますか?
A. 国民健康保険では、原則としてありません。国民健康保険法58条2項は「市町村及び組合は、…条例又は規約の定めるところにより、傷病手当金の支給その他の保険給付を行うことができる」という書き方をしていて、市町村などの判断で行える任意の給付という位置づけだからです。「絶対にない」ではなく「実施しているかどうかは、お住まいの自治体や加入している国民健康保険組合の条例・規約次第」というのが正確なところなので、気になる場合は窓口でご確認ください。会社員から独立を考えている場合、この差は事前に知っておく価値があります。
Q. 「傷病手当」と「傷病手当金」は同じものですか?
A. 別の制度です。傷病手当金は健康保険の給付で、在職中に働けなくなったときのもの。傷病手当は雇用保険の給付で、ハローワークの説明では「受給資格者が離職後、公共職業安定所に来所し、求職の申込みをした後に15日以上引き続いて疾病又は負傷のために職業に就くことができない場合」に支給され、「傷病手当の日額は基本手当の日額と同額です」とされています。また、離職後に30日以上引き続き働けない状態になったときは、申出によって基本手当の受給期間を最大4年間まで延長できます。1文字違いですが窓口も内容も違うので、調べるときは名前を正確に。
Q. 障害年金をもらいながら働くことはできますか?
A. 働いていること自体で一律に対象外になるわけではありません。日本年金機構は障害の程度3級を「労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態」と説明していて、就労と両立し得る等級です。ただし認定は障害認定基準にもとづく個別の判断で、この記事で「もらえる/もらえない」を判定することはできません。なお、同じ病気やケガで障害厚生年金を受けられるようになると、傷病手当金は原則として支給されません。健康保険法108条3項が「傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき厚生年金保険法による障害厚生年金の支給を受けることができるときは、傷病手当金は、支給しない」と定めていて、障害年金の額(日額に換算した額)が傷病手当金の額より少ないときだけ、その差額が支給されるからです。協会けんぽの傷病手当金支給申請書にも「同一の傷病で障害年金等を受給している場合は、傷病手当金の額を調整します」という設問があります。両方をまるごと受け取れるわけではなく、傷病手当金のほうがゼロになることもある——生活費を見積もるときは、ここを二重に数えないでください。判断に迷うときは年金事務所にご相談を。
📎 参考にした主な公的情報・一次情報
- 全国健康保険協会:傷病手当金
- 全国健康保険協会:健康保険傷病手当金支給申請書(申請期限・添付書類)
- 全国健康保険協会:現金給付受給者状況調査報告(令和6年度)
- e-Gov法令検索:健康保険法(第62条・第99条・第104条・第108条)
- 全国健康保険協会:健康保険傷病手当金支給申請書(PDF)
- 日本年金機構:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
- 日本年金機構 年金用語集:障害認定日
- 日本年金機構:「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和8年度送付分)
- 日本年金機構:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額
- 日本年金機構:令和8年4月分からの年金額等について
- e-Gov法令検索:国民年金法 第25条(公課の禁止)
- e-Gov法令検索:厚生年金保険法 第41条(受給権の保護及び公課の禁止)
- e-Gov法令検索:国民健康保険法 第58条(傷病手当金の任意給付)
- 国税庁 タックスアンサー No.1400(給与所得・質疑応答)
- ハローワークインターネットサービス:基本手当について(傷病手当・受給期間の延長)
※本記事は情報提供を目的としており、特定商品の購入推奨ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
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最終更新日:2026年9月4日














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