病気やケガで会社を長く休むことになったとき、給料の代わりに入ってくるお金があります。健康保険の傷病手当金です。前回の記事では、その額の決まり方を確かめました。
ただ、そこには続きがあります。休んでいる間も、社会保険料の請求は止まりません。しかも、給与から天引きされていたものが、天引きできない形で残り続けます。この記事では、その仕組みを法律の条文まで降りて確かめて、毎月いくら手元から出ていくのかを金額にします。
- 休職すると給料が止まるので、社会保険料も止まると思っている
- 「保険料は会社が立て替えておきます」と言われたが、意味がよく分からない
- 傷病手当金がいくら入るかは調べたが、そこから何が引かれるのかは知らない
- 休職中に払う保険料が、いくらになるのか見当がつかない
- 休んでいる間の住民税がどうなるのか、考えたことがない
→ ひとつでも当てはまったら、この記事が「休職中に毎月いくら出ていくのか」を数字にするお手伝いをします。
- 保険料が免除される休みは、法律上産休と育休の2つだけだということ
- 休んで収入が下がっても、保険料の元になる金額は下がらない理由
- 会社が「立て替える」ことになる条文上の仕組み
- 傷病手当金から社会保険料を引いて、手元にいくら残るのか
- 休職に入る前に、勤務先に確認しておきたい3つのこと
ふくおさん、前に傷病手当金の話をしてもらったっすよね。給料の代わりに月20万円くらい入るって。あれで生活できるってことっすか?
そこがね、もう一段あるんだ。傷病手当金は入ってくるお金だけど、出ていくお金のほうは止まらないんだよ。社会保険料は休んでいる間もかかり続ける。
えっ、給料が出てないのにっすか。給料から引かれるものなのに、その給料がないのに?
うん。しかも金額も安くならないんだ。ここが多くの人の想像とちょっと違うところで、安くする仕組みが、法律に用意されていないんだよね。
用意されてない…? そんなことあるんすか。産休の人は免除されるって聞いたことあるっすけど。
いい記憶だね。免除の条文はちゃんとある。ただしその条文が用意されているのは、産休と育休だけなんだ。今日はそこを一つずつ、条文と数字で確かめていこうか。

少し前に、僕の給与明細の控除欄を、上から一行ずつ数えたことがあります。健康保険、厚生年金、雇用保険、所得税、住民税。それまで十年以上、いちばん下の振込額しか見ていませんでした。
数えてみていちばん驚いたのは、厚生年金の額でした。ひとつの項目だけで、他の控除を全部足したのと近い大きさがある。そして、その同じ額を会社がもう一度、自分の分として払っているということも、そのとき初めて具体的に分かりました。
その明細を眺めながら、ひとつ引っかかったことがあります。この欄は、給料が出ているから成り立っているんじゃないか。給料が止まったら、この行はどこへ行くんだろう、と。
そのときは答えを持っていませんでした。今回はそこを、条文まで戻って確かめています。
給料が止まっても、社会保険料の請求は止まりません
まず、いちばん大事なところから書きます。病気やケガで会社を休んでいる間も、健康保険料と厚生年金保険料はこれまでどおり発生し続けます。
理由は単純で、社会保険料は「給料をもらったこと」に対してかかるものではなく、健康保険・厚生年金保険に加入している月についてかかるものだからです。厚生年金保険法81条2項は「保険料は、被保険者期間の計算の基礎となる各月につき、徴収するものとする」と書いています。休んでいても会社に籍がある限り、被保険者であることは変わりません。
- 休職中も健康保険は使えます(保険が使える状態が続くので、保険料もかかります)
- 休職中も厚生年金の加入期間は積み上がります(将来の年金額に反映されます)
- 止まるのは給与の支払いであって、加入そのものではありません
つまり「収入が止まったのだから保険料も止まる」ではなく、「保険が使える状態が続いているのだから保険料も続く」。制度としては筋が通っています。ただ、生活する側からすると、入ってくるお金は減るのに、出ていくお金は減らないという形になります。
免除される休みは、産休と育休の2つしかありません
「休んでいる間は免除される」というイメージを持っている人は少なくないと思います。実際、免除の仕組みは存在します。ただし、それがどの休みに用意されているのかを、条文から順に確かめてみます。
健康保険法のなかで、休みや身柄の拘束を理由に「保険料を徴収しない」と書いている条文は、次の3本です。この3本と、病気やケガの休職を並べてみます。
| 休みの種類 | 健康保険法 | 厚生年金保険法 | 保険料 |
|---|---|---|---|
| 産前産後休業 | 159条の3 | 81条の2の2 | 本人・会社とも免除 |
| 育児休業等 | 159条 | 81条の2 | 本人・会社とも免除 |
| 少年院などへの収容・拘禁 | 158条 | 規定なし | 徴収されない |
| 病気・ケガの休職 | 該当する条文なし | 該当する条文なし | そのまま |
厚生年金保険法も同じで、徴収の特例を定めているのは81条の2(育児休業等)と81条の2の2(産前産後休業)の2本だけです。この2本の間に、病気の休職を扱う条文は挟まっていません。
日本年金機構の案内も、この構造をそのまま見出しにしています。保険料の免除を説明するページのタイトルが「保険料の免除等(産休・育休関係)」で、かっこ書きで対象が限定されているのです。中を開くと、保険料の免除として並んでいるのは産前産後休業期間中の免除と育児休業期間中の免除の2つだけでした(ほかに、3歳未満の子を養育する期間の年金額を守る「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」などの案内があります)。
⚠️ ここは「探しても見つからない」という形の答えです。病気やケガの休職について、保険料を止める・安くするという条文は、健康保険法にも厚生年金保険法にもありません。「勤務先に聞いてください」と書いてある解説が多いのは、免除の可否が勤務先の判断で変わるからではなく、そもそも法律が免除を用意していないからです。勤務先に確認することになるのは、免除ではなく「誰が、どうやって払うか」のほうです。
休んでいる間も、保険料の元になる金額は下がりません
次に出てくる疑問はこれだと思います。「免除はないとしても、収入が下がったのだから、保険料の計算の元になる金額は下がるのでは?」
社会保険料は標準報酬月額という区分の金額に、決められた料率をかけて計算します。この標準報酬月額は、給与が大きく変わったときに見直される仕組み(随時改定)があります。ただ、日本年金機構は随時改定の説明の最後に、こう書いています。
「なお、休職による休職給を受けた場合は、固定的賃金の変動がある場合には該当しないため、随時改定の対象とはなりません。」
(日本年金機構「随時改定(月額変更届)」/更新日 2026年7月13日)
つまり、休職して収入が下がっても、それを理由に随時改定で標準報酬月額が下がることはありません。保険料は休職前と同じ額のままです。
会社都合の休みだと、扱いが変わります
同じページのすぐ上に、対照的な記述があります。随時改定のきっかけになる「固定的賃金の変動」に該当する例として、「一時帰休(レイオフ)のため、継続して3カ月を超えて通常の報酬よりも低額の休業手当等が支払われた場合」が挙げられているのです。
会社の都合で休んで休業手当が下がったときは、標準報酬月額が見直される道がある(2等級以上の差が出るなど、ほかの要件を満たした場合)。一方で、病気で休職して休職給が下がっても、それは見直しのきっかけにならない。この非対称が、公式サイトの1ページの中で並んでいます。
毎年7月に届け出て9月分から適用される定時決定(4月・5月・6月の報酬をもとに標準報酬月額を決め直す仕組み)も、支払基礎日数が17日以上ある月の報酬で計算します(健康保険法41条)。休職で給与が出ていない月は、そもそも計算に入りません。4月・5月・6月のすべてが支払基礎日数17日未満なら通常の計算ができないので、保険者が算定した額が報酬月額になり(健康保険法44条)、休職前の標準報酬月額が引き継がれるのが一般的です。
⚠️ ただし、会社から休職給が出ている場合は別です。日本年金機構の事務取扱いの事例集は、「病気欠勤中や休業中に支払われる手当であっても労働の対償となり、『報酬等』に該当する」として、例に休職手当を挙げています。つまり休職給は報酬なので、4月・5月・6月に支払基礎日数が17日以上ある月があれば、その低い額をもとに定時決定が行われ、9月分から標準報酬月額が下がることがあります。下がれば保険料も安くなりますが、同時に傷病手当金の額も将来の年金額も下がります。最終的な判断は保険者(協会けんぽ・健康保険組合)が行うので、詳しくは勤務先か年金事務所にご確認ください。
会社の都合で休むと下がって、病気で休むと下がらない…。なんか逆な気がするっす。病気のほうが大変じゃないっすか。
気持ちはすごく分かるよ。ただ、下がらないことにも一応の理由があってね。標準報酬月額は将来もらう年金の計算にも使われるんだ。休職中に下げてしまうと、その分だけ老後の年金も減る。傷病手当金の額も、この標準報酬月額から計算されるしね。
あー、下がったら手当も下がっちゃうのか。じゃあ「下がらない」のは、悪いことばっかりじゃないんすね。
そう。そこは表と裏なんだ。だから僕は「高い」と考えるより、先に金額を知っておくほうが役に立つと思ってる。次はその金額を出してみようか。
会社は納め続けています ― だから「立て替え」が起きます
ここまでで、「保険料はかかり続ける」「金額も下がらない」の2つが分かりました。では、その保険料は誰がどうやって納めているのか。ここを分けて考えると、休職中に起きることの全体像が見えます。
ここで効いてくる条文は2本です。
- 健康保険法161条2項「事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う」(厚生年金保険法82条2項もほぼ同じ内容です)
- 健康保険法167条「事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(中略)を報酬から控除することができる」(厚生年金保険法84条も同じ形です)
この2本を並べると、休職中に何が起きているかがはっきりします。
会社は、本人の負担分も含めた全額を納める義務を負っています。これは給与が出ているかどうかとは関係ありません。一方で、本人の負担分を回収する方法として法律が用意しているのは「報酬から控除すること」だけです。休職中は報酬の支払いがないので、控除する対象が存在しません。
つまり、会社は納める義務を果たし続けるのに、本人から回収する手段が条文上は用意されていない。この隙間を埋めるために、実務では会社がいったん立て替えて、あとから本人と精算するという形がとられています。
⚠️ 精算のやり方は、法律で決まっていません。毎月本人が会社の口座に振り込む、復職後の給与から少しずつ差し引く、賞与から一括で差し引くなど、会社によってまったく違います。「勤務先に確認してください」という案内が多いのは、この一点が理由です。決まっていないからこそ、休職に入る前に確認しておく価値があります(あとで具体的な確認事項を挙げます)。
傷病手当金から、保険料は天引きされません(別に払うことになります)
ここでもうひとつ、勘違いしやすいところがあります。「傷病手当金から天引きされるのでは?」という点です。
結論から書くと、引かれません。理由は2つあります。
1つは、傷病手当金を払うのが会社ではなく、健康保険の保険者(協会けんぽや健康保険組合)だからです。控除できると定めた健康保険法167条は「事業主は」で始まります。会社が払っていないお金から、会社が差し引くことはできません。
もう1つは、傷病手当金が「報酬」に当たらないからです。日本年金機構の事務取扱いの事例集は、「労働の対償として受けるものでないもの」の例として、はっきり傷病手当金を挙げています(同じ欄には労災保険の休業補償、解雇予告手当、退職手当も並んでいます)。
- 傷病手当金はそのままの額が本人の口座に振り込まれます
- 社会保険料は別のルートで、自分から支払う(または後日精算される)ことになります
- だから通帳を見ると「入ってきた額」だけが見えて、出ていく分が見えにくい
この「見えにくさ」が、休職中の家計をいちばん狂わせます。手当の額だけで生活を組み立てると、あとから保険料の請求が来て計算が合わなくなる。だから、次のように先に引き算をしておきます。
実際に、毎月いくらかかるのか
金額を出してみます。ここでは協会けんぽ広島支部の令和8年度の保険料率を使います。健康保険料率は都道府県によって違うので、自分の支部の率に置き換えてください。厚生年金保険料率18.3%は全国共通です。
| 標準報酬月額 | 健康保険 | 介護保険 40〜64歳のみ |
子ども・子育て 支援金 |
厚生年金保険 | 合計 40歳未満 |
合計 40〜64歳 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 9,780円 | +1,620円 | 230円 | 18,300円 | 28,310円 | 29,930円 |
| 30万円 | 14,670円 | +2,430円 | 345円 | 27,450円 | 42,465円 | 44,895円 |
| 41万円 | 20,049円 | +3,321円 | 471円 | 37,515円 | 58,035円 | 61,356円 |
※すべて本人が負担する分(会社が同額を負担するので、実際に納められている額はこの約2倍です)。協会けんぽ広島支部・令和8年度の保険料額表より。健康保険9.78%・介護保険1.62%・子ども・子育て支援金0.23%・厚生年金18.300%を労使で折半。円未満の端数は、給与から控除する場合の端数処理(50銭以下は切り捨て)で計算しています。2026年9月時点の率で、年度ごとに見直されます。休職中に本人が会社へ現金で支払う場合は端数処理が異なり(50銭未満は切り捨て・50銭以上は切り上げ)、標準報酬月額41万円では合計が1円多くなります。なお、勤務先が健康保険組合の場合は、保険料率も、本人と会社の負担割合も組合ごとに異なります(健康保険法162条は、規約で会社側の負担割合を増やすことを認めています)。実際の額はご加入の健康保険組合にご確認ください。
標準報酬月額30万円・40歳未満の会社員なら、月42,465円。40歳以上65歳未満なら介護保険料が加わって月44,895円です。給与明細で見ていたときと、1円も変わりません。
⚠️ 雇用保険料と所得税は、休職中はかかりません。雇用保険料は「賃金総額」に料率をかけて計算するもので(労働保険の保険料の徴収等に関する法律11条・31条)、ここでいう賃金とは「労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」(同法2条2項)です。給与の支払いがなければ賃金がゼロなので、雇用保険料も発生しません。給与から源泉徴収される所得税も同じで、支払う給与がなければ天引きされません。金額としては小さいですが、社会保険料と同じように扱わないよう注意してください。
傷病手当金から保険料を引くと、手元に残るのはいくらか
ここが、この記事でいちばん出したかった数字です。前回の記事で計算した傷病手当金の額から、いま出した社会保険料を引いてみます。
| 標準報酬月額 | 傷病手当金 の日額 |
30日分 | 社会保険料 40歳未満 |
手元に残る額 |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 4,447円 | 133,410円 | −28,310円 | 105,100円 |
| 30万円 | 6,667円 | 200,010円 | −42,465円 | 157,545円 |
| 41万円 | 9,113円 | 273,390円 | −58,035円 | 215,355円 |
※日額は健康保険法99条2項の端数処理どおりに計算(標準報酬月額の平均÷30を10円単位に丸め、その3分の2を1円単位に丸める)。12か月ずっと同じ標準報酬月額だった場合の額です。待期の3日を終えたあと、30日すべてが支給対象になった場合を並べています。40〜64歳の場合は介護保険料が加わるので、手元に残る額はそれぞれ103,480円・155,115円・212,034円になります。この「手元に残る額」から、さらに住民税の支払いがあります(次の見出しで扱います)。
標準報酬月額30万円の人で見ると、200,010円が入って、42,465円が出ていく。手元に残るのは157,545円です。ここに住民税の支払いも重なります。
そして、どの水準でも比率はほとんど同じです。40歳未満なら、社会保険料は傷病手当金の約21%(介護保険料が加わる40〜64歳は約22%)。手当のおよそ5分の1が保険料に消えると考えておくと、収入の水準が違っても見当がつきます。
📌 覚えておくと早い順番
- 直近12か月の標準報酬月額の平均を給与明細かねんきん定期便で確かめる
- ÷30して3分の2=傷病手当金の日額
- 日額×支給対象の日数(休み始めの月は待期の3日を除く)から、その約21%(40歳未満の場合。40〜64歳は約22%)を引く
住民税は「去年の自分」に対してかかります
もうひとつ、休職中に効いてくるのが住民税です。
住民税は前年の所得をもとに計算され、6月から翌年5月までの12回に分けて給与から差し引かれます(特別徴収)。つまり、休職して今年の収入が減っても、いま払っている住民税は、元気に働いていた去年の所得に対するものです。休職を始めた月に急に安くなることはありません。
そして、給与の支払いが止まると、この特別徴収も続けられなくなります。地方税法321条の5第2項は、納税義務者が「当該特別徴収義務者から給与の支払を受けないこととなつた場合には、その事由が発生した日の属する月の翌月以降の月割額(中略)は、これを徴収して納入する義務を負わない」と定めていて、同条3項で、会社は市区町村にその旨の届出書を出すことになっています。
- 会社が立て替えて特別徴収を続ける(社会保険料と同じく、あとで精算)
- 普通徴収に切り替わり、自宅に届く納付書で自分で納める
どちらになるかは会社の運用によります。普通徴収に切り替わると、月ごとではなく年4回ほどのまとまった額で請求が来る点に注意してください(納期は自治体によって異なります)。
給与明細から何が引かれていたのかを一度整理しておくと、この切り替わりがイメージしやすくなります。給与明細の控除欄の中身は、休職したときに「どれが止まって、どれが残るのか」を見分ける地図になります。
休職に入る前に、確認しておきたい3つのこと
ここまでの内容を、行動に落とします。免除がない以上、決まっていないのは「どう払うか」だけです。そこを先に決めておけば、休んでいる間にお金のことで消耗せずに済みます。
毎月振り込むのか、復職後の給与から差し引くのか、賞与から精算するのか。会社ごとに違うので、就業規則の休職に関する定め(何か月まで休めるか、上限を過ぎたらどうなるか)とあわせて確認します。
「いくらを・いつまでに・どこへ」の3点です。金額はこの記事の表で見当がつきますが、実際の額は勤務先が把握しています。あわせて、社会保険料以外に給与から引かれていたもの——財形貯蓄、団体生命保険、社員持株会、労働組合費、社宅費、企業型DCのマッチング拠出など——の扱いも聞いておきます。給与が止まればこれらも天引きできなくなるので、会社に振り込むか、いったん止めるかを決めることになります。
会社が立て替えて特別徴収を続けるのか、普通徴収に切り替わるのか。切り替わるなら、納付書がいつ届いていくら払うことになるのかを聞いておきます。
あわせて、傷病手当金の申請書を誰がいつ出すのかも確認しておくと安心です。申請書には療養担当者(医師など)の証明と事業主の証明が必要で、休んだ期間が過ぎたあとに申請する仕組みなので、最初の振込までには時間がかかります。その間も保険料の請求は来ます。
⚠️ 最初の1〜2か月がいちばん厳しくなります。給与は止まり、傷病手当金はまだ振り込まれず、社会保険料と住民税だけが先に来る。この期間を現金で越えられるかどうかが、休職中の家計の山場です。生活防衛資金を「何か月分」で考えている人は、「月にいくら出ていくか」でも一度数えてみてください。

前回、傷病手当金の記事を書いたとき、僕は「1日いくら」を計算して、それを生活費と並べるところまでやりました。そこで一度、区切りをつけたつもりでいたんです。
ところが、書き終わってから引っかかりが残りました。手当が入るのは分かった。では、その間に出ていくお金は本当に減るのか。会社員をやっていれば、給料から毎月ごっそり引かれているものがあることは知っています。あれは、どこへ行くんだろう、と。
今回それを条文まで戻って確かめて、答えははっきりしました。出ていくほうは、ほとんど減りません。むしろ、天引きという便利な仕組みだけが外れて、自分で払う形になって残ります。
僕は生活防衛資金を「生活費の何か月分」という単位で考えてきました。今は、そこに「休んでも減らない固定費」として社会保険料と住民税を足して数えるようにしています。数え方をひとつ変えただけですが、必要な現金の見え方はけっこう変わりました。
備えるというのは、こういう地味な足し算のことなんだろうと思っています。
払った分は、社会保険料控除の対象になります
最後に、税金の計算で差し引ける話も書いておきます。休職中に払った社会保険料は、その年の社会保険料控除の対象です。
国税庁のタックスアンサーNo.1130は、「控除できる金額は、その年に実際に支払った金額または給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です」と説明しています。給与から天引きされたものだけでなく、自分で支払ったものも同じように全額が対象になります。
ただし社会保険料控除は所得から差し引く仕組みで、払った保険料がそのまま戻ってくるわけではありません。休職で年間の収入が大きく減った年は、そもそも納める税金が少ないので、控除によって軽くなる額も小さくなります。
休職中に払った分をどう処理するかは勤務先の事務によって異なります。勤務先が把握している分は年末調整でまとめて処理されるのが一般的ですが、含まれていない場合は確定申告で控除を受けることになります。いくら払ったかが分かる記録は残しておいてください。具体的な申告の要否は、勤務先か所轄の税務署にご確認ください。
なお、傷病手当金そのものには所得税も住民税もかかりません(健康保険法62条が「租税その他の公課」を課せないと定めています)。収入としては課税されず、支払った保険料は控除になる。この2つはセットで覚えておくと、休職明けの確定申告で迷いません。
正直、聞く前より怖くなった気もするっす…。でも、知らないまま休むよりはマシっすよね。
そこがこの記事のいちばん大事なところだと思う。怖いのは「いくら出ていくか分からない」ことであって、金額が分かってしまえば、それはただの数字なんだ。月4万円と分かれば、4万円分の準備を考えればいい。
自分、まだ健康なんすけど、いま何かやっておくことってあるっすか?
ひとつだけ。給与明細の控除欄から、雇用保険料と所得税を除いた合計額を見ておくこと。あれが「休んでも出ていき続ける金額」のおおよその大きさだからね。休職の話じゃなくて、自分の家計の話として見ておけばいいよ。
それなら今日できるっす! 帰ったら明細ひっぱり出してみるっす。
うん、それで十分。備えって、けっこう地味な足し算の積み重ねなんだ。一緒に確認していこうか。
まとめ|出ていくお金も、数えれば怖くなくなります
休職中のお金は、入ってくる額だけを見ていると足りなくなります。入る額から、休んでも減らない額を引いておく。それだけで、必要な現金の大きさが決まります。
- 病気・ケガの休職で保険料を免除する条文は、健康保険法にも厚生年金保険法にもありません。免除があるのは産前産後休業と育児休業等の2つだけ
- 休職しても標準報酬月額は下がりません(日本年金機構「休職による休職給を受けた場合は…随時改定の対象とはなりません」)。だから保険料の額も休職前と同じ
- 会社は全額を納める義務を負う一方、本人負担分を回収できるのは報酬から控除する場合だけ。だから「立て替えとあとで精算」が起きる
- 傷病手当金は「報酬」ではないので、そこから天引きはされません。保険料は別に支払うことになります
- 金額の目安は傷病手当金の約21%(40歳未満の場合。40〜64歳は約22%)。標準報酬月額30万円・40歳未満で、12か月ずっと同じ標準報酬月額・待期の3日を終えて30日すべてが支給対象なら、傷病手当金200,010円に対して月42,465円(40〜64歳は44,895円)
- 住民税は前年の所得に対するもの。給与が止まると特別徴収が続けられなくなり、立て替えか普通徴収に切り替わります
- 払った分は社会保険料控除の対象。傷病手当金そのものは非課税です
- 給与明細の控除欄の合計額を確かめる(雇用保険料と所得税を除いた額が、休んでも出ていき続けるおおよその金額です)
- 標準報酬月額から傷病手当金の30日分を出し、そこから約21%(40歳未満の場合。40〜64歳は約22%)を引いてみる
- その手元に残る額と、毎月の固定費を並べて、差額を確かめる
- 差額の3〜6か月分を、すぐ動かせる現金で持てているかを見る。足りなければ 生活防衛資金の作り方 を読み返して置き場所を決める
- 休職の可能性が具体的にあるなら、就業規則の休職規定と保険料の精算方法を先に確認しておく
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※この記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資信託には元本割れの可能性があり、将来の運用成果を保証するものではありません。「0円」は口座開設料・口座管理料についてのもので、取引手数料や投資信託の信託報酬など、商品・取引に応じた費用は別途かかります。NISAは非課税で投資できる制度(箱)で、値動きするのはその中で買った投資信託などの商品です。積立投資に回す前に確かめたいのは、手元の現金と生活防衛資金のほうです。各社のサービス内容・条件は2026年9月時点のもので、最新の内容は各社公式サイトでご確認ください。休職中の保険料の金額・精算方法、傷病手当金の受給可否は、勤務先とご加入の健康保険(協会けんぽ支部・健康保険組合)にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 休職中の社会保険料は、だいたいいくらになりますか?
A. 休職前と同じ額です。標準報酬月額30万円・40歳未満・協会けんぽ広島支部の令和8年度の率で計算すると、本人が負担する分は月42,465円(健康保険14,670円+子ども・子育て支援金345円+厚生年金27,450円)。40歳以上65歳未満なら介護保険料が加わって月44,895円です。健康保険料率は都道府県によって違うので、実際の額はご自身の支部の率でご確認ください。なお、雇用保険料は賃金に対してかかるものなので、給与が出ていない間は発生しません。
Q. 「会社が立て替えておきます」と言われました。あとでまとめて請求されますか?
A. 会社によります。法律が定めているのは「事業主が納付する義務を負う」(健康保険法161条2項)ところまでで、本人負担分をどう受け渡すかは決められていません。毎月本人が振り込む会社もあれば、復職後の給与や賞与から差し引く会社もあります。復職後にまとめて差し引かれる形だと、戻ったばかりの月の手取りが大きく減ることになるので、金額と時期を先に聞いておくと安心です。
Q. 傷病手当金から天引きしてもらうことはできませんか?
A. できません。傷病手当金を支払うのは会社ではなく健康保険の保険者(協会けんぽ・健康保険組合)で、保険料を控除できると定めた健康保険法167条は「事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては」という書き方になっています。また、日本年金機構の事務取扱いの事例集では、傷病手当金は「労働の対償として受けるものでないもの」=報酬に該当しないものとして例示されています。傷病手当金はそのままの額で振り込まれ、保険料は別に支払うことになります。
Q. 休職が長引いたら、保険料は安くなりますか?
A. 随時改定(月額変更届)で下がることはありません。日本年金機構は随時改定の説明で「なお、休職による休職給を受けた場合は、固定的賃金の変動がある場合には該当しないため、随時改定の対象とはなりません」と明記しています。毎年7月に届け出て9月分から適用される定時決定も、4月〜6月のうち支払基礎日数が17日以上ある月の報酬で計算する仕組みなので、給与が出ていない月は計算に入りません。ただし、会社から休職給が支払われていて、4月〜6月に支払基礎日数17日以上の月がある場合は、その低い額で定時決定が行われ、9月分から下がることがあります。なお、標準報酬月額が下がらないということは、傷病手当金の額も将来の年金額も下がらないということでもあります。実際の取り扱いは保険者が判断するので、詳しくは年金事務所または加入している健康保険にご確認ください。
Q. 産休・育休はなぜ免除されるのに、病気の休職は免除されないのですか?
A. 産前産後休業と育児休業等については、保険料を徴収しないと定めた条文が個別に置かれているためです(健康保険法159条の3・159条、厚生年金保険法81条の2の2・81条の2)。免除は「休んでいるから」ではなく「その休みについて条文があるから」認められるという構造になっています。病気やケガの休職について同じ条文は置かれていないので、免除もありません。なお、免除された期間も年金の加入期間としては扱われるなど、産休・育休の免除には固有の設計があります。
Q. 休職中の住民税はどうなりますか?
A. 住民税は前年の所得に対してかかるので、休職しても今年払う分がすぐに減ることはありません。給与の支払いがなくなると、地方税法321条の5第2項により、会社は翌月以降の月割額を徴収・納入する義務を負わなくなり、同条3項で市区町村に届出をすることになっています。実務としては、会社が立て替えて特別徴収を続けるか、普通徴収に切り替わって自分で納付書で納めるかのどちらかです。普通徴収は年に数回のまとまった請求になるので、金額と納期をあらかじめ確認しておいてください(納期は自治体によって異なります)。
Q. 休職中に払った社会保険料は、税金の計算で差し引けますか?
A. 社会保険料控除の対象になります。ただし所得から差し引く仕組みなので、払った額がそのまま戻ってくるわけではなく、休職で年間の収入が減った年は軽くなる額も小さくなります。国税庁のタックスアンサーNo.1130は「控除できる金額は、その年に実際に支払った金額または給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です」としていて、自分で支払った分も対象です。勤務先が把握している分は年末調整で処理されるのが一般的ですが、含まれていない場合は確定申告で控除を受けます。支払った額が分かる記録は残しておいてください。具体的な申告の要否は勤務先または所轄の税務署にご確認ください。
Q. 休職のあと退職した場合、保険料はどうなりますか?
A. 会社の健康保険から抜けることになるので、①健康保険の任意継続被保険者になる、②お住まいの市区町村の国民健康保険に加入する、③家族の被扶養者になる、のいずれかを選ぶことになります。任意継続は会社負担分がなくなるため保険料は全額自己負担になりますが、協会けんぽの場合、令和8年度は標準報酬月額の上限が320,000円に設定されています。厚生年金は国民年金(第1号被保険者)に変わります。どれが有利かは家族構成や前年の所得によって変わるので、退職前に加入先の健康保険と市区町村の窓口で見積もりを取って比べてください。なお、退職日までに継続して1年以上被保険者だったなど一定の要件を満たせば、傷病手当金は退職後も引き続き受けられる場合があります(健康保険法104条)。
📎 参考にした主な公的情報・一次情報
- e-Gov法令検索:健康保険法(第41条・第44条・第62条・第99条・第104条・第158条・第159条・第159条の3・第161条・第162条・第167条)
- e-Gov法令検索:厚生年金保険法(第81条・第81条の2・第81条の2の2・第82条・第84条)
- e-Gov法令検索:地方税法 第321条の5(給与所得に係る特別徴収税額の納入の義務等)
- e-Gov法令検索:労働保険の保険料の徴収等に関する法律(第2条・第11条・第31条)
- 日本年金機構:随時改定(月額変更届)
- 日本年金機構:定時決定(算定基礎届)
- 日本年金機構:標準報酬月額の定時決定および随時改定の事務取扱いに関する事例集(PDF)
- 日本年金機構:保険料の免除等(産休・育休関係)
- 全国健康保険協会:令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(広島支部・PDF)
- 全国健康保険協会:傷病手当金
- 全国健康保険協会:任意継続被保険者制度
- 国税庁 タックスアンサー No.1130 社会保険料控除
- 広島市:給与からの引き落とし(特別徴収)(住民税)
※本記事は情報提供を目的としており、特定商品の購入推奨ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
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最終更新日:2026年9月7日














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